※本記事は、2023年10月刊行の『MarkeZine』(雑誌)94号に掲載したものです
【特集】本格AI時代到来 広告・マーケティング業界の行方
─ AI時代の来し方行く末 ビッグウェーブを乗りこなすヒント
─ 生成系AIで検索連動型広告はどう変わる? プラットフォーマーとマーケターの現在地
─ 独自のデータを持っていることが生成AI活用の差別化になる
─ AIで広告クリエイティブの制作はどう変わる?サイバーエージェントに聞く、変化と未来(本記事)
─ AIで変わる仕事、変わらない仕事:AIが最大限の力を発揮できるよう環境をいかに構築するか
─ AIで変わる仕事、変わらない仕事:生成AIにできること、クリエイターにしかできないことは?
─ ChatGPTで話題沸騰となった2023年、今日までに見定めたAI活用のリアルな現在地
AIはクリエイターの能力を拡張する
──サイバーエージェントの広告クリエイティブ制作におけるこれまでのAI活用の流れと、現在の戦略や方針をうかがえますか。
当社は7年前、AI事業本部にAIクリエイティブDivという組織を立ち上げ、広告クリエイティブにおけるAI活用を進めています。当初は広告効果を予測する目的で、「効果予測AI」を用いた「極予測」シリーズの展開が始まりました。当初から一貫して「クリエイターの能力を拡張する」という方針を掲げています。デザイナーやクリエイターの一人あたりの制作量を増やせるような、広告コピー自動生成など様々な機能を開発しています。
実際にデザイナー一人あたりが制作可能なクリエイティブの本数は大幅に増加しています。もちろん闇雲に量産すればいいわけではありませんが、効果予測の機能によって、効果が高いクリエイティブが生まれる確率も上がっています。
──効果を予測するAIとクリエイティブを生成するAI、2種類のAIは御社でそれぞれどのように進化し、組み合わさってきたのでしょうか?
大きな区別では2種類ですが、一口に生成AIと言ってもテキストや動画、静止画といったクリエイティブの種類によって、様々なAI技術を用いています。効果予測のAIも同様です。テキストを扱う言語処理や画像処理、動画の音声処理など、多様な技術を組み合わせて実現しています。
──そうしたAIの進化を経て、クリエイティブの制作過程は以前と比べてどのように変化しましたか?
以前は「こういうクリエイティブを作ろう」と事前に決めて作成していたのですが、予測AIによりデザイナーが「予測しながら作る」ことが可能になりました。ここが誤解されやすいポイントなのですが、予測AIは、完成したクリエイティブだけの効果を予測するものではありません。
たとえばバナー広告なら、そこに載せる要素は商品の画像がいいのか、それとも人物のほうがいいのか、実写かイラストのどちらがいいのか……あらゆる選択肢があります。その中から最適な要素を組み合わせて作るわけですが、その要素を選ぶ段階で、効果を予測するのです。5パターンの画像のうち、どれが最も効果が出そうか。さらにその画像に載せるコピー5パターンのうち最適なものはどれか、と予測します。
つまり、各選択にAIを活用するため作り始めるときに完成形がわからないのです。「ある商品のバナーを作る」ということだけが決まっていて、どんな画像でどういうコピーになるのかは、予測しながら徐々に解像度が上がっていきます。そのため、都度お客様に見せていたラフ画や校正のプロセスが減り、制作のスピードも速くなっています。