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MarkeZine Day 2023 Autumn

ヤッホーブルーイングとていねい通販に学ぶ、誰かの「推し」になるコミュニケーション設計

数値化はあくまでファンを「発見」するためのもの

佐藤:1年という期間内ではなく、これまでの累計売上で見るようになった背景には何か理由があるのでしょうか?

戸田:期間内の合計金額をKPIにしてしまうと、関係性ではなく、期間内にいかに多く購入してもらうためのアプローチにどうしても意識が向いてしまいます。

 私たちのポリシーは「長いお付き合い」なので、それを目標にするなら累計金額が一定を超えた場合に見るのはロス期間だけで良いのではないかと考えを切り替えました

 ただ、ロス期間を指標としてアプローチを続けた結果、年間購入金額は上がり、売上UPにも繋がっているのも事実です。

関:なるほど。ポートフォリオ設定の裏にはそのような考えがあったんですね。

戸田:ただ、こうした仕組みで把握できないファンがいることも忘れてはいけません。

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戸田:これはあるPRブログに書かれた「すっぽん小町」が合わなかった人の声なのですが、ていねい通販とのやり取りに感動してコメントを残してくれたんです。先ほどのポートフォリオ基準で見れば、優良どころか離脱と分類されてしまいます。ただこの方のていねい通販に感じていただけた印象やこういったコメントまでくださる姿勢を「離脱」と分類するには大きな違和感を持ちました。

 このことから、数値化はファンを測定するためでなく、あくまでファンを「発見」するための数値化なのだと思い直しました。

 ポートフォリオももちろん大事ですが、ファンを見つけ出す、つながろうとする姿勢が大事だと感じ、ここ数年は商品購入以外で繋がり続けられるSNSやオウンドメディアの運用に力を入れるようになりました。

関:なるほど。購入軸を判定基準に持ちつつも、それだけ見ていては見逃してしまうファンもいるということですね。

「ぞっこん度」を指標にブランドの愛情度を定量化

佐藤:私たちの場合は、「よなよなエール」に対する愛情度(ブランドロイヤルティ)を定量的に捉えるため、「ぞっこん度」という尺度を採用しています。

 沢山のお客様とお話しするなかで、製品に対する愛情の強さと飲用量や購入金額には相関があると体感していました。それを感覚ではなく、定量的な物差しが持てるようになれば、お客様の解像度や気持ちを上げていくのに役立つと思い、数年前から始めています。

 具体的には、SNSフォロワーと通販会員のお客様を対象に年に1回、「よなよなエール」、ヤッホーブルーイングの製品に対する気持ちを5段階で聞きます

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佐藤:アンケートではこれと併せて年間購入頻度や購入量などを聞き、これらから大まかにLTVを算出しているのですが、やはりぞっこん度と売上には強い相関関係が見られました。

 売上や利益は好きになってもらった後についてくるものだとわかれば、徹底的に好きになってもらうことを優先できます。それに、「売上を上げよう」よりも「好きになってもらおう」の掛け声の方が私たちらしいと思っています。

戸田:5段階の言葉のチョイスが絶妙ですね。ヤッホーブルーイングさんに非常にフィットした表現になっています。

関:ていねい通販さんの場合、たとえば健康食品だと「夢中で飲んでいる」の言葉は合いませんよね。他企業が取り入れる場合は、ブランドの特性からニュアンスを考えて上手にアレンジする必要がありそうです。

佐藤:こうしたアンケートを採るうちに、ファンになる過程も見えるようになってきました。入り口はパッケージのデザインやネーミングで、次に普段とは違うクラフトビールの独特な味・香りといった機能価値に惹かれ、さらに気持ちを充足させるような情緒価値に惹かれて、最後に製品のつくり手である企業のミッションや顧客対応に触れて好きになる。

 今、会社全体でこのステップを順番に踏んでもらえるように意識してコミュニケーションをしていこうと考えているところです。

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コミュニケーション活動それぞれの性質を整理して使い分ける

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この記事の著者

畑中 杏樹(ハタナカ アズキ)

フリーランスライター。広告・マーケティング系出版社の雑誌編集を経てフリーランスに。デジタルマーケティング、広告宣伝、SP分野を中心にWebや雑誌で執筆中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2023/12/28 08:00 https://markezine.jp/article/detail/43878

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