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田中洋が紐解く、ビジネス成功のキーファクター

【前編】田中教授×ルース氏対談:完全に「Back!」したNYから最新のマーケトピックスを紹介

「プロダクト中心」から「顧客起点」へ

田中:それでは本題に入らせてください。NYないしアメリカの最新マーケティングトレンドは、どのようなものでしょうか?

ルース:今日は、5つのマーケティングトレンドをご紹介したいと思います。

 1つ目は、「カスタマーマネジメント(顧客管理)」です。この考えは、決して新しいものではありませんが、よりメインストリーム(主流)になってきました。簡単に言うと、キーファクターがプロダクトマネジメントからカスタマーマネジメントへと変わってきています。

 これまで、伝統的なパッケージ型消費財の場合、マーケターの観点はプロダクトマネジメントにありました。マーケターのゴールは、顧客を見つけ、販売促進をすることでした。その成果がP&L(損益)で評価されてきたわけです。

 そのようなプロダクト中心の考え方ももちろんあるのですが、そこにカスタマーマネジメントの要素も加えられるべきと考えられるようになってきました。消費者は、企業にとって貴重な存在です。もっとしっかりマネジメントされるべきですし、企業においては財務上の資産でもあります。つまり商品のP&Lを見るとの同じように、顧客一人ひとりのP&Lも見るべきなのです。こうした考え方は、顧客一人単位、世帯単位に適用され、BtoBの顧客においては各ビジネスパーソンと各企業と、その両方に適用されています。

従来のカスタマーマネジメントから何が変わっているのか?

田中:カスタマーマネジメントは、従来からあるマーケティングの考え方とも言えなくはありません。ルースさんがおっしゃっているカスタマーマネジメントの考え方というのは、従来のそれより、より洗練され・より細分化されているのでしょうか?

ルース:というよりは、デジタル化が進んだことで、カスタマーマネジメントが主流になってきたのだと思います。デジタルツールを使えば、消費者行動に直接アクセスできますし、そのデータを蓄積・管理して、最適化させていくことができますからね。

 デジタル化以前には、顧客と企業との関係は、もっと距離がありました。ブランドと私たちの間には、小売や流通会社がいましたし、出版も、保険も、その他のカテゴリーも、第三者の流通業者を介していたため、販売はブランドが直で行うものではなかったわけです。

 顧客と直接つながっていないなら、顧客との関係性を管理することは非常に難しいです。そもそも、小売業者は、顧客データの詳細をメーカーと共有しようとしませんでした。なぜなら、小売業者にとっても顧客データは自分たちの重要な資産であり、(顧客と繋がっていることこそが)自分たちの優位性であると考えているからです。

田中:その話は、D2Cマーケティングにつながってきますか?

ルース:そのとおりです。今、アメリカで支持を集めているスタートアップは、ほとんどがD2C企業です。スタートアップの企業家は、顧客とダイレクトに繋がれることの力とインターネットの有用性を理解しています。

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P&Gが買収した「チャーリーバナナ」の例

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この記事の著者

田中 洋(タナカ ヒロシ)

中央大学名誉教授。東京大学経済学部講師。京都大学博士(経済学)。マーケティング論専攻。電通で21年実務を経験したのち、法政大学経営学部教授、コロンビア大学客員研究員、中央大学大学院ビジネススクール教授などを経て現職。日本マーケティング学会会長、日本消費者行動研究学会会長を歴任。『ブランド戦略論』(2017年、有斐閣...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2023/11/06 09:30 https://markezine.jp/article/detail/43906

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