トップファネルを肥やす鍵は「ダークファネル」にあり
LayerXの組織体制はどうなっているのか。同社の場合、マーケティング組織は商談創出を目的とする「リードマネジメント」と、ブランドの認知度向上を目的とする「ブランドデザイン」の二つに分かれている。

2022年2月には在籍人数がわずか3名だったマーケティングチームも、その後すぐ10名前後まで成長。チャネル専任のチームを設け、プロダクト横断でマーケティングに取り組んでいたものの、チーム間に分断が発生する恐れがあった。サイロ化を防ぐため、より大きなKPIをメンバーが共有できるよう「リードマネジメント」と「ブランドデザイン」という大きな括りが設けられたわけだ。
「リードの質を高めていくためには、チームの細分化が避けては通れません。BtoBのマーケティングでは、一つのリードに複数のフェーズやプロセスを挟むため、それらのフェーズとプロセスの検証をどれだけ専門的にできるか、そしてどれだけのメンバーでできるかが肝になると思います」(松岡氏)
LayerXとLegalOn Technologiesに共通するリード創出施策の一つが、テクノロジーを活用したABMだ。「日本のBtoB企業でABMを実践できているところは決して多くない」と野村氏は指摘する。
野村氏によると、BtoBマーケティングでトップファネルを肥やすためには「ダークファネル」と呼ばれるアノニマスなリード予備軍が非常に重要だという。

「従来はダークファネルの可視化が難しかったのですが、今はテクノロジーによってLPやサービスサイトに訪問している企業や団体名に光を当てることが可能となりました。ABMを活用すれば、潜在顧客を単なるアノニマスとしてではなく、顕在化させ企業単位で可視化・分析できるようになります。BtoBマーケティングにはこれまでインバウンドとアウトバウンドがありましたが、興味を持った顧客側と提案したい企業側が双方のアクションをトリガーとして成立していく手法を『バイバウンド』と呼ぶことができるかと思います」(野村氏)
成長に不可欠な変化への適応力とチームワーク
各社のデマンドジェネレーションの変遷や成長期の体制づくりなどについて紹介してきた本セッション。松岡氏と山崎氏は次のようなメッセージで講演を締めくくった。
「プロダクトのリリースから約3年の間に、フェーズを変えながらデマンドジェネレーションのベストプラクティスを模索し続けてきました。アフターコロナにともなうオフライン回帰もあり、検証が難しいタイミングだったと思います。ただ、こうした変化はこれからも起きるはずです。マーケティングとセールス、カスタマーサクセスが連携し、自分たちが何にフォーカスするべきかを明確にして社内の共通認識にしていくアクションは、今後も諦めずに実行していきたいですね」(松岡氏)
「特にスタートアップの場合は、成長が速いぶん走りながら考えなければなりません。当社のバリューに『オーナーシップを持って変化を楽しむ』というものがあります。改めて急成長するベンチャーには大事な姿勢だと感じました。そしてSaaSのビジネスだけでなく、あらゆるビジネスにおいてもチームワークは大事です。マーケティングだけでなく、カスタマーサクセスまで含めた横連携の重要性を改めて実感しました」(山崎氏)