語呂合わせやサウンドロゴからもうかがえる「記憶への定着」を促す音声
製塩会社の印象的な掛け声やお菓子メーカーのサウンドロゴなど、幼少期に見たり聴いたりしたものでさえ、いまだに口ずさめる人が多いのではないでしょうか。音声がマーケティングで注目される理由は、その長期記憶の性能やエンゲージメントの高さにあります。
2008年に岡山大学で行われた聴覚の長期記憶についての研究では、音声を活用すると、非常に大きな学習効果が現れることがわかっています。たとえば、学生時代に歴史の年号を覚える際「鳴くよウグイス平安京(794年の平安京遷都)」といった、音で記憶する形で暗記した経験が誰しもあるのではないでしょうか。音を用いた記憶への定着は、昔から学習のテクニックとして行われてきました。
またradikoが行った調査のデータでは、音声広告は動画広告よりも「商品・サービス名」「広告のストーリー・内容」の記憶率や記憶維持率が高くなることが示されています。

企業が消費者向けのブランディングを行う際、企業名やブランド名を覚えてもらいたい場合も同様に音声は有効です。これらは、「サウンドブランディング」「ソニックブランディング」と呼ばれ、企業のCMで流れるサウンドロゴなどがその代表例です。飲料や食品メーカー、ゲーム業界の広告クリエイティブなど、「その音を聞いただけでそのブランドであることを認知できる」作りになっていることがわかります。
音声の没入感が作る、信頼性と感情的なつながり
米国のAudacyと調査会社Alter Agentsによる2021年の調査では、「ユーザーは熱心な気持ちや感情的なつながり、高い信頼性をソーシャルメディアなどの他メディアよりも音声コンテンツに持つ」ことが示されています。音声のコンテンツ接触を脳の動きと照らし合わせて調べた結果、音声メディアは没入型のメディアであることがわかっているのです。
また同調査では、音声メディアを信頼しているユーザーは、ソーシャルメディアを信頼しているユーザーに対し14%以上多い結果に。音声メディアの信頼性の高さがうかがえました。
日本の事例を紹介すると、ニッポン放送がラジオ番組「オールナイトニッポン」でイベントを行うと、熱狂的なファンで数万人規模の会場がすぐに埋まってしまいます。この状況は、音声ならではの没入感や信頼性の強さが引き起こすものだといえるでしょう。
ラジオなどで聞くパーソナリティの声など、最も脳に近い器官である「耳」から入る音声情報は、目をつぶればそのタレントやパーソナリティが隣で話しているかのごとく脳が錯覚します。それが「会話」の疑似体験となり、非常に高い没入感や信頼性を発揮するのではないかと筆者は考えています。