ストリーミングの普及で高まるデジタル音声広告への注目
——まず、これまでのSpotifyでのご経験や、現在担当されている領域やミッションなどについてお聞かせください。
私は現在、Spotifyでグローバルの広告ビジネスおよびプラットフォームの責任者を務めています。以前は、アメリカのYahoo!で12年間デジタル広告に携わり、その後約10年間はスタートアップ企業でデジタル広告のビジネスの立ち上げを行っていました。そしてその後、「アーティストやクリエイターが作品への対価を得られるようにする」というSpotifyのミッションに惹かれて2019年に入社しました。
私たちのチームもこのミッションを大事にしており、Spotifyが運営するオーディオ広告のマーケットプレイスである「Spotify Audience Network」を通じてブランドと数億人のリスナーをつなげることで、アーティストやクリエイター、ポッドキャスターが彼らの活動で収益を得られるような仕組みの構築を目指しています。
グローバルの音声広告市場で見られる四つのトレンド
——グローバルにおけるデジタル広告市場のトレンドをどのようにお考えですか。
四つのトレンドが挙げられます。
一つ目が、伝統的なメディアが急激にデジタル化を目指していることです。これは、消費者のニーズが多様化したことによって、彼らがどのような購買行動をとっているのかを追跡し、ニーズを把握する必要が高まったことが原因です。
二つ目として、ワイヤレスヘッドホンの普及による音楽ストリーミングサービスの利用者数の急増が挙がります。実際、Spotifyでは現在、180以上の国と地域で6億200万人以上のユーザーが利用するオーディオコミュニティにまで拡大しています。さらに、Spotifyの無料プランのユーザーでも、一日平均で2.4時間利用していることがわかっています。こういった流れから、多くのマーケターが、スクリーンに触れていない消費者にいかに広告をリーチするかを考えるようになっています。
三つ目は、機械学習および生成AIです。近年のAIブームにより、多くのデジタル広告がAIを活用するようになりました。Spotifyでも10年以上前から機械学習を活用して、パーソナライズされたレコメンデーションや音楽体験の提供を進めています。今後、さらにプラットフォームにAIを取り入れていくことで、様々な機能やクリエイティブの強化などが期待できるでしょう。
四つ目のトレンドとして、Z世代からの音声広告に対する受容度の高まりが挙がります。Z世代は、自分の興味があるカルチャーを深掘りし、自分自身やクリエイター、その周囲の世界について詳しく知るためにオーディオを活用する傾向が見られます。Spotifyにおいても、Z世代は、2023年の上半期だけで累計5,600億以上の楽曲と30億以上のポッドキャストエピソードを聴きました。この数値は前年比で76%増加しています。Z世代は音楽とポッドキャストの再生において最も急速に成長している属性と言えるでしょう。