広告に載ることを“体験”に変換
次に、2023年10月に実施されたペットフード「CoCoGourmet」のOOHを紹介します。同広告では、「忠犬も待てない」のキャッチコピーとともにブレブレな写真がファーストビューとなっており、強い印象に残るクリエイティブになっています。

ペットオーナーから提供された写真を中心に構成された同広告には、おいしさを表す直接的な表現は特になく、使われているのはブレた写真と「食べたい」のメッセージのみ。
さらに、この犬の飼い主が“載ったこと”をSNS上で投稿。この投稿が1万近い拡散を記録し、SNSに留まることなく他メディアにも取り上げられるなど話題化しました。
OOHに載ることを一種の体験に変え、それを本人が投稿することで、フォローされている他のペットユーザーに波及させた手法は見事でした。

ユニークなクリエイティブといえば、自動車教習所を運営するレインボーモータースクールの広告も忘れられません。同社が2023年9月から展開していた広告では、運転免許証を誰が見ても欲しくなるようなスタイリッシュな演出で表現。

「衝撃の0.76㎜」「想像を超えた軽さ。」など、運転免許証をまるでブランド製品かのようなキャッチコピーで説明したデザインはインパクト抜群でした。また、掲出したタイミングもApple社の新型iPhone15発表のタイミングに近かったこともあり、一つのネタとして盛り上がりを見せていました。
凝った演出で視認率のアップを狙う
2023年11月にメルカリの関連会社であるメルコインが展開した「メルコイン」の広告も、シンプルながら興味関心をそそるクリエイティブでした。

この掲出場所は地下鉄への乗り換えの導線上で、正面からでなく横目にこの広告を見ることになるのですが、それでもギリギリ読める文字バランスが絶妙でした。
私自身、今まで数多くのOOHを見てきましたが、明らかに理解に労力が必要そうな内容はスルーしがちです。しかし、同広告のように「ぱっと見で内容が判断できないだけ」であれば意識的に視認して解読しようとします。今回のように読めなさそうで読める絶妙なデザインは、何かと気になってしまうから不思議です。
2023年下半期は、面の場所や枠サイズにとらわれない広告や、立体的なデザインの広告、ピールオフなど特殊な演出の広告が例年と比較しても増えてきている印象がありました。

たとえば、2023年10月に新宿で実施された「QT PRO」の仮面ライダー起用広告や、12月に渋谷で実施されたNETFLIXのドラマシリーズ「幽☆遊☆白書」のOOHなどはファンを中心に話題になりました。
このように、しっかりと消費者の気持ちを捉えられれば話題化につながり、多くの方に視認していただける可能性が高まる。そういった期待感からか演出に使うコスト感が大きくなってきている印象もあります。

今後、伸長が予測されているOOH市場。2024年もどのような広告に出会えるか、非常に楽しみですね。