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飯髙悠太氏が探る「エモ」と「ビジネス」と「成長」

純粋に自分が欲しいものを作れば反応してくれる人がいる――プロダクトと想いの強さで成長するOSAJI

結局、プロダクトに尽きる

飯髙:ちなみに、OSAJIが広まってきているという感覚はどこかのタイミングでありましたか?

茂田:フォロワー数を増やすために何かやるとか考えるでもなく、インスタのフォロワーが自然に右肩上がりに増えていったのは純粋に初めての経験でしたね。売れるものってマーケティングコストをかけなくても売れるんだと実感しました。

 これまで中途半端にマーケットに迎合して作ったものは広告投資をしなきゃ売れなかったし、広告投資をしても思うような売上にはなりませんでした。一方で、OSAJIは化粧品業界の初動立ち上がりのマーケティング投資としては非常に少ないんです。

 日東電化工業では食器のブランド等を新規事業として進めていて、僕も手伝っているのですが、やっぱり簡単には売れません。その中でも、金脈に当たるまで広告に投資するのはやめようとか、プロダクトを見直そうと言えるのは大きいと感じています。事業で火傷しなくなったといいますか。最近ではコンサル的なご相談をいただくことも増えてきたのですが、必ず聞くのはプロダクトのことです。

日東電化工業の食器「HEGE(ヘゲ)」
日東電化工業の食器「HEGE(ヘゲ)」

飯髙:「プロダクトにこだわっていますか?」という投げかけは重要ですよね。私も支援をさせていただく中で、ブランドに問われているのは「どれぐらい商品に愛を持っていますか?」でしかないと感じています。「こんなにすごいよ」という部分があっても、それを顧客目線で語れるかは別ですよね。場合によっては、気持ちが独り歩きしているケースもあって、そこを正す作業が必要なこともあります。

 ブランドだって常にうまいことできるわけではありません。しかし、きちんと良さが伝わっていれば、ブランドのことを好きな方は「大丈夫だよ。良いもの作ってくれてるから」と言ってくれます。OSAJIのように自然発生的に、何かこれ良いよねという声が生まれて無限に広がっていくには、まさにプロダクトがコアにあるべきだと思います。

一方的では意味がない、社会彫刻という考え方

茂田:僕はShigetaの冷蔵庫という個人サイトを持っていて、その中で、これからのビジネスや文化のあり方、思想を語り合う理想論という対談企画をしています。クラウドファンディングプラトットフォーム「MOTION Gallery」創設者の大高健志さんとの対談で、社会彫刻という言葉がキーワードに出てきました。簡単に言うと、作る側も買う側もアートですという考え方。

 この考え方が非常に腑に落ちたんです。僕達はこうだったらいいよねっという美容概念や美意識を持っています。それに対して、僕達が発信するだけでは、単なる暑苦しい話で、それやっぱり消費してくださる人がいて初めて社会が生まれる。ユーザーさんとともに社会彫刻をしていると僕は思っています。

 要は物を買うためにお金を出すというより、この人たちが引っ張っていってくれる社会や文化は、きっと楽しいだろうからお金を出すと思ってもらえたらいいな、と。たとえばシャンプー1つとっても、もちろん僕らは使い心地や品質といった意味では最上位を目指しています。でも、お客様から見たらドラッグストアで800円で買えるシャンプーとの明確な差なんてわかりません。今はもうプロダクトのスペックとパフォーマンスで選んでもらうなんて無理な時代です。

 だからこそOSAJIジャーナルや、事業と関係ないことをやっています。これからの目指す社会や文化に共感していただけたらOSAJIのプロダクトを買ってください、と。

飯髙:プロダクトを軸に据えつつ、根底にある目指す社会や文化への共感を重要視しているのですね。

丸紅との提携で目指すものとは?

飯髙:ところで、OSAJIは丸紅さんと資本提携もしていますよね。資本提携をきっかけに変化するブランドもありますが、今後目指しているところはどんなものでしょう?

茂田:まず、OSAJIが大きくなることに歯止めをかけるつもりもないし、かといって無理やり大きくする気もありません。ですから正直に言うと、丸紅さんからお話をいただいた際も消極的でした。

 アライアンスを組んだのは丸紅さんの中でも次世代事業開発本部という、次世代事業を作っていく部署です。話してみると、そのコンセプトが非常に本質的でした。純粋に良いものを、求めている人に届けましょうという話で、自然エネルギーなど次世代の事業となる領域の1つであるウェルネスの文脈でOSAJIにも声がかかったんです。だから僕達は丸紅さんの資本が入ってIPOを目指していませんし、丸紅さんもIPOを求めていません。

飯髙:丸紅さんも無理に拡大しようという志向性ではなく、OSAJIの世界観や目指すものに共感した上で資本を入れているんですね。

茂田:そうですね。丸紅さんの動きを見ていると、次世代に生き残ることをシビアに考えていていると感じます。OSAJIとの資本提携も100年続くブランドをともに作ることが目的で、そこから外れたら契約は破棄されます。

飯髙:それはすごいですね!今日は茂田さんの考え方や、OSAJIの目指すかたちをいろいろお話しいただきありがとうございました。

編集後記:飯髙悠太

 茂田さんは、OSAJIを始める前に幾つかのビジネスの失敗を経験し「僕が作るものは売れないんじゃないか」という時期もあったと言います。

 それでもずっと「良いものを作りたい・楽しみたい」という軸をブラさず信じて、事業をやってこられています。また、マーケティング1つにとっても色々な違和感があって、今までの「そうじゃないよね」という負の部分を取っ払い、誕生したのが【OSAJI】。

 それ以前には、お父様が経営するメッキ加工業の仕事が軌道に乗り、一時期はその業界で生きていこうと考えたと言います。その時にお父様の「いつまでメッキやってんだ」の一言に急き立てられて今に至っています。 世の中のマーケティングがプライスとプロモーションだけで議論されているという疑問点や、プロダクトを求めていない人に無理に売りつける必要はないのにという想い。行き着くところは、お客さまとwin-winな関係性と心地良さを築けて初めてビジネスは成立するという点。

 茂田さんとのインタビューを通して、芯からお客さま目線で考えていること、そして「良いものを作りたい・楽しみたい」という昔からの想いをひしひしと感じました。

 ユーザーファーストいう言葉を発するのは簡単ですが、そこを本気で追求しているOSAJIの今後がとても楽しみです。

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この記事の著者

飯髙 悠太(イイタカ ユウタ)

株式会社ベーシック執行役員、株式会社ホットリンク執行役員CMOを経て2022年6月に「ひとの温かみを宿した進化を。」をテーマに株式会社GiftXを創業し、「おもいが伝わる。ほしいを贈れる」選び直せるソーシャルギフト「GIFTFUL」運営。現在、企業のアドバイザーやマーケテ...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

MarkeZine編集部(マーケジンヘンシュウブ)

デジタルを中心とした広告/マーケティングの最新動向を発信する専門メディアの編集部です。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2024/04/24 14:35 https://markezine.jp/article/detail/44695

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