リテールメディア業界が注力すべきは“顧客体験価値”
MZ:2023年の動向を踏まえ、2024年のリテールメディア領域の展望を伺えますか。
杉浦:リテールメディアの領域は、今後は業界全体でメーカー様の視点に加えてお客様の視点、すなわち「顧客体験価値をいかに高めるのか」がより重要となるフェーズに入っていくと考えています。
メーカー様の先には必ずお客様がいます。リテールメディアを通じてお客様が有益な情報を得て、よりよい顧客体験につながる。その連動が重要です。
リテールメディアは元々、メーカー様にもお客様にも納得していただける「三方良し」のメリットを持って始まったもの。そういう意味では、日本でもようやくリテールメディアのあるべき姿に向かい始めた、といえるでしょう。2024年は私たちも、お客様にとってより広告を役立つものにできるようセブン-イレブンアプリの改善などの取り組みを進めていきます。
MZ:確かに、リテールメディアに注目が集まり始めた2022年や2023年は、メーカーとプラットフォームの視点で語られるケースが多かったように思います。
2024年は成長を問われる一年に
MZ:アプリや購買データの話が先ほど出ましたが、セブン-イレブン・ジャパンではリテールメディア事業において店舗はどのような位置づけをしていますか。
杉浦:現在、私たちのリテールメディアにおける試みは「店舗のメディア価値」「データのマーケティング価値」の二つに分けられます。データのマーケティング的な活用はもちろん、今後はレジ画面など店舗のサイネージを見ていただくことによる「認知媒体」としても強化したいと考えています。
セブン-イレブン店舗の総数は全国21,000店にのぼる上、すべての都道府県に出店しています。一日に約2,000万人ものお客様に利用いただいており、その数は日本の総人口の6分の1にものぼります。
この広告媒体/面としての強みを考えると、店舗を“メディア化”することでお客様の認知の獲得からアプリによる販促連動、購買後の行動を追うことが可能です。つまり、カスタマージャーニー全体をセブン-イレブン・ジャパンのリテールメディアの取り組みでカバーできるようになります。

MZ:2024年のセブン-イレブン・ジャパンの展望についてお教えください。
杉浦:リテールメディア事業をもっと価値あるものにしていきたいですね。メーカー様との価値共創を大切にし、より深いコミュニケーションや連携を取っていきたいです。
リテールメディアにとって、2023年は“認知を高める一年”となりました。そして2024年は“成長を問われる”一年になると考えています。そのために、当社もアプリや店内サイネージなどの強化を進める予定です。
また広告運用面においても効率化を図るべく、生成AIを含むテクノロジー活用も検討していきます。進化するテクノロジー活用を通して、広告クリエイティブの親和性の向上につなげていければと思います。これらの取り組みを通じて、リテールメディア業界全体を盛り上げる機運を高めていきたいですね。