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NewsPicksのLTVドリブンマーケティング

NewsPicks実践:フリーミアムモデルで「LTV算出」が広げてくれたマーケティングの可能性

マーケティングが「予算」に対して持っている役割と責任

 さて、本連載の1本目で「マーケティング投資を複数年で回収する場合、月次や年次での売上目標と時間軸のズレが発生し、マーケティングの部署だけではなく、社内で共通の認識を持つことがとても重要」とお伝えしました。

 時間軸のズレというのは、「無料会員の獲得を推進しても、事業年度の利益には一部しか貢献せず、その代わり来期以降の利益になる」ということです。将来的に得られる利益は最大化しますが、事業年度という単位では純粋な投資になります。事業年度単位での利益を最大化したい場合は、事業年度内で回収できる施策に変更する選択もあります。ただこれは先にお伝えした通り、そういった施策は限られていることと、費用対効果がすぐに悪化するので投資効率が悪くなります。

 持続的に成長し、利益を最大化させるためには、社内関係者がフリーミアムのビジネスモデルをしっかり理解し、先々を見据えて行動することが必要です。

 やっかいなのは、フリーミアムモデルは複雑で、LTV算出モデルもどうしても複雑になることです。算出された結果は金額なのでシンプルですが、途中経過がブラックボックスだとなかなか信用しにくい部分もあります。かといって途中経過も複雑なので全ての人が理解できるものでもありません。

 これはLTVの計算モデルや想定獲得単価がどのように決まったのか、過去の会員の収益実績値や、獲得単価の実績と合わせて丁寧に説明することで解決できます。ファクトとセットでイメージがわき、理解してもらいやすくなります。

 また、極端なシミュレーションをしてみることも重要です。たとえば、NewsPicksでは、マーケティング予算をすべて有料会員を増やす施策に振った場合と、無料会員を増やす施策に振った場合にどうなるか試算した結果、無料会員に振ったほうが20%以上収益が増えることがわかりました。こうした数字があることで、客観的に判断しやすくなるはずです。

 マーケティングは長期的な目線で投資をする部署だからこそ、説明責任もあります。自分達が追う数字に関して、根拠をしっかり説明できるようにすべきだと考えています。

LTVの算出がマーケティングの可能性を広げてくれた

 NewsPicksではLTVを正しく算出することにより、有料会員を増やすための施策を進めるべきなのか、無料会員を増やすため施策を進める獲得を進めるべきなのか、ビジネスモデルに関わる大きな意思決定ができています。さらに複数年にまたがる投資でも、正しい評価ができるようになりました。

 個別の施策の運用に関しては、以前は獲得単価が低ければ低いほど良しとし、単価が高い施策は諦めていました。ですがこれも、獲得の経路別のLTVを計算できるようになったことで、利益額(LTVー獲得単価)が大きい施策を正しく評価できるようになりました。その結果、獲得単価が高くても、LTVがそれ以上に高ければ投資する価値があると判断できています。

 また、現時点では無料会員を増やすための施策を優先していますが、LTVを基準として投資できるものがあれば、フレキシブルに判断しています。たとえば有料会員を増やすための施策としてYouTubeへの広告出稿は、テストマーケを実施しLTVを算出した結果、投資収益率が高いことがわかり、会社として追加投資しています。

 このように、複雑なフリーミアムモデルであっても、LTVを算出することで正しく意思決定することができます。また、複雑というのは、言い換えれば我々が操作できるレバーの数が多いことの裏返しです。レバーを動かした結果としてLTVがどうなるのかがわかれば、恐れることなくチャレンジできます。

 大袈裟かもしれませんが、我々はLTVを算出することにより、可能性を広げることができています。

 NewsPicksをもっと多くの方に知っていただき、経済の面白さを伝えていくためにも、様々な施策にチャレンジしていきたいと考えています。

 また、我々のLTV算出モデルも発展途上であり、同じような課題・悩みを抱えている皆様と情報交換しながらより良いものにアップデートしていきます。

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この記事の著者

菊地 幸司(コウジ キクチ)

 千葉大学工学部卒業後、三井物産子会社にて新規事業開発を担当。Eコマース事業の立ち上げ、Webサイト改善、CRMシステムの構築、在庫予測システムの構築などデータドリブンマーケティングにより黒字化。その後アイ・エム・ジェイ(IMJ)にてデジタルマーケティング戦略立案・実行支援に従事。

 2017年にNew...

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2024/04/24 14:33 https://markezine.jp/article/detail/44815

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