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第106号(2024年10月号)
特集「令和時代のシニアマーケティング」

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西口さん!難しいことはわかりませんが、マーケティングで一番大事なことを教えてください

【マーケティング入門第6回】顧客ニーズに“どんぴしゃ”で当てられますか?


 現在、マーケティング領域では膨大な方法論や用語などの情報が氾濫し、初心者マーケターが知識や手法を学ぶ壁となっている。Strategy Partnersの西口一希氏は、初心者向け書籍『マーケティングを学んだけれど、どう使えばいいかわからない人へ』(日本実業出版社)への反響から、「さらにかみ砕いて伝えるべきだと感じた」という。本連載では、マーケティング領域に足を踏み入れて2年目のMarkeZine編集部・吉永が、西口氏にマーケティングの基本の“き”から質問。第6回は、これまでの連載で確認してきたWHOとWHAT、その間に成立する「価値」を踏まえて、顧客ニーズをどうしたらつかめるかを掘り下げていく。

企業視点は決して“間違い”ではない

MarkeZine吉永(以下、MZ):マーケティング入門連載の第5回では、価値が成立する「WHOとWHATの組み合わせ」をどう見つけるか、またHOWのコミュニケーションは、その組み合わせを実現する手段だと伺いました。

西口:アイデア(顧客が価値を見出す可能性のある提案)には2種類あり、プロダクトのアイデアとコミュニケーションのアイデアは別だ、という話ですね。広告やキャンペーンなどのHOWがどれだけ楽しく目を引いても、プロダクトの提案性がなければ、売り上げにはつながりません。

『たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング』(翔泳社)p34より)
たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング』(翔泳社)p34より

MZ:その点で、「ヤクルト1000」や、アサヒスーパードライの商品の例はわかりやすかったです。とはいえ、どうしても提供側は「これに価値があるはず」という思い込みで進んでしまう部分があると思います。企業目線に寄らずに、顧客目線でそのニーズに“どんぴしゃ”で当てていくことは、非常に難しそうです。

西口:確かに、簡単なことではありません。まず、デフォルトで「企業目線に寄っている」自覚を持つことが容易ではありません。その上で、プロダクトを作って送り出す過程で「企業目線に寄りすぎないようにしよう」と思い続けることがまた難しいと思います。

 ただ、私は「企業目線が間違っている」とは考えていません。あくまで、企業の目線と顧客の目線をすり合わせることが大事です。

重要なのは、仮説を立てチューニングすること

西口:企業目線の発案で、大ヒットにつながることもあります。たとえば、「iPhone」はその典型です。当時、そもそもスマートフォンという製品自体が浸透しておらず、「『携帯電話+音楽プレーヤー+α』のようなプロダクトが欲しい」というニーズは顕在化していませんでした。次にどんな携帯電話が欲しいかと尋ねられて、そのように答える顧客はほぼいなかったはずです。

MZ:すると、iPhoneは企業目線のプロダクトだったのでしょうか?

西口:そういえると思います。ただし企業の独りよがりの視点ではなく、提案したスティーブ・ジョブズ氏やAppleの皆さんが「こういうものが欲しい」「このように作ったらいいのでは」と検討して誕生したものですから、少なくとも最初の顧客はいたわけです。

 その後の広がりはご存じの通りで、具体的なプロダクトを目の前に出されたら「こういうものが欲しかった!」という人が世の中にたくさんいた。企業目線のアイデアが、多くの顧客ニーズの顕在化につながった典型例ですね。

MZ:同じ企業目線でも、うまくいく場合とそうでない場合があるのですね。違いは何でしょうか?

西口:うまくいく場合は、(1)「こんな顧客にこのように売れるだろう」という仮説がある、(2)顧客目線とのすり合わせが継続的になされている、といった条件があると思います。

 まず、(1)の仮説がなければ、出したはいいが売れないという事態に陥りがちです。もちろん仮説はあくまで仮説なので、出してみて(2)のように顧客の反応や意見を捉えながら、チューニングすることが大切です。

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この記事の著者

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

吉永 翠(編集部)(ヨシナガ ミドリ)

大学院卒業後、新卒で翔泳社に入社しMarkeZine編集部に所属。学生時代はスポーツマーケティングの研究をしていました。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2024/05/20 19:08 https://markezine.jp/article/detail/44938

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