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効率化を言い訳に「顧客」を忘れていないか?アクセンチュアが分析する社会トレンド&裏にある生活者の本音


「効率化」を言い訳に「顧客への愛」を忘れていないか?

MarkeZine編集部:それでは、「Accenture Life Trends 2024」で提示されている5つのトレンドについて詳しくお聞かせください。

番所:「Life Trends 2024」では、大きく5つのトレンドをご紹介しています。

1.愛を取り戻せ

2.インターフェース革命

3.クリエイティブの逆境

4.テクノロジーの飽和点

5.成功神話の解体

「Accenture Life Trends 2024」全文
「Accenture Life Trends 2024」全文(PDF)

 はじめに1つ目の「愛を取り戻せ」について、これは「企業と顧客のエンゲージメント」、つまり企業と顧客の関係性に変化が起きていることを示唆するものです。日本でもこの10年程、顧客志向の重要性が多々説かれていますから、皆さんも十分に理解されていると思います。企業も顧客体験を向上するための投資を行っており、企業にとって顧客が「取引相手」以上の存在となっていることは間違いありません。

 しかし、この不況の中、企業がコスト削減を余儀なくされているのは周知の通りです。気づかれないように実施したつもりのコスト削減が実は顧客に伝わっており失望を招いてしまう、というケースも多く見受けられるようになっています。

 たとえば、以前は電話越しに予約の対応をしてくれていたレストランが、音声ガイダンスでの対応に切り替わっていた時、少し残念に感じてしまう人は僕を含め一定数いるはずです。企業側が良かれと思って実施している効率化や、存続のために必至であるコスト削減などが、顧客とのエンゲージメントを低下させることに繋がっている――その警告のメッセージを「愛を取り戻せ」に込めています。

MarkeZine編集部:コスト削減、値上げ、顧客満足度などを天秤にかけつつ、顧客エンゲージメントについて再考するのは非常に難しそうです。

木原:そうですよね。価格設定に関しては、現在は円安も相まって、日本企業は特に困難な状況にいると承知していますが、「顧客の購入行動と顧客体験がどのようにリンクしているか」という方程式を解いてみることは1つの突破口になると考えます。その際、個別の商品単位ではなく、ブランド単位・事業単位で分析をすることが重要なポイントです。一部分だけを見てしまうと、顧客体験と事業(ブランド)価値のバランスを見誤ってしまう可能性があります。

Accenture Songのコンサルティング部門を率いている木原久明氏。2002年にアクセンチュアに入社、以来一貫してコンサルティング業務に従事。本記事後編にて、「Accenture Life Trends 2024」を踏まえて日本企業が起こすべきアクションを解説している
アクセンチュア ソングの執行責任者、またコンサルティングチームを率いる木原久明氏。2002年にアクセンチュアに入社、以来一貫して金融など幅広い企業に対するコンサルティング業務に従事。本記事後編にて、「Accenture Life Trends 2024」を踏まえて日本企業が起こすべきアクションを解説。

AIにブランドのアイデンティティを反映させる時代に

番所:続いて、2つ目のトレンドは「インターフェース革命」。これは生成AIがあらゆるインターフェース、すなわちユーザーとの接点に与える影響を捉えたものです。ここで言う革命とは、探したい情報がある時に検索エンジンで検索するといった「検索モード」から、生成AIを用いる「会話モード」へ、テクノロジーのインターフェースが移行しつつあることを示しています。

 たとえば、ホテルを予約する時、インターネットで条件に合うところを探すのが検索モードだとすると、生成AIによる会話モードでは「麻布十番駅からアクセスの良い、1泊3万円くらいのホテルを探して」といったリクエストに答えてくれるようになるイメージですね。タクシーの手配や、近場のレストランを予約するといったことまで、いずれは1つのインターフェースでできるようになるでしょう。

 ポイントはここからで、生成AIを活用したインターフェースは、その企業やブランドの化身のような存在になっていくと考えられます。AIにどういったアイデンティティを持たせるか、顧客体験にどう作用させるかが重要な企業課題となってくるわけです。並行して、企業は、事業・ブランド単位で生成AI活用の組織体制を構築する必要も出てくるでしょう。

MarkeZine編集部:なるほど。ブランドの人格を表すものとして生成AIによるインターフェースを構築することが、一貫した顧客体験の実現に繋がるのですね。

木原:そうです。これまでのチャットボットは、商品/チャネル/業務といった単位で分かれていましたが、生成AIの登場でそれがブランド単位になるのがポイントです。

 ちなみにインターフェース革命にはもう一つ先の段階があり、顧客が「こんな商品が欲しい」と相談したら、どのブランドを選択すべきか教えてくれるような統合的なインターフェースが登場してくる可能性があります。生成AIにより可能になる未来の優れたインターフェースとは、自分専用のコンシェルジュや執事を提供するようなものなのではないかと考えます。

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テクノロジーの急激な進化と、その裏にある生活者の本音

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この記事の著者

塚本 建未(ツカモト タケミ)

ライター・編集者・イラストレーター。早稲田大学第二文学部を卒業後、社会人を経て再び早稲田大学スポーツ科学部へ進学。2度目の学部卒業後は2つの学部と高校デザイン科で学んだ分野を活かすためフィットネス指導者向け専門誌「月刊Fitness Journal」編集部に所属してキャリアを積み、2011年9月から同雑誌の後継誌「月刊JAPAN FITNESS」編集部の中心的な人物として特集・連載など数多くの誌面を担当した。現在はWebメディアに主な...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2024/07/02 15:32 https://markezine.jp/article/detail/44960

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