BtoBマーケティングに欠かせない「データ連携」
MarkeZine編集部(以下、MZ):昨今、BtoB企業でもデジタルマーケティングへの取り組みが本格化してきたように感じます。長くBtoBマーケティング支援を行っているメディックスは、BtoB企業の取り組みの現状をどうとらえていますか。
根口:BtoBマーケティングに力を入れる企業が増えて、ノウハウや事例などの情報が出回るようになりました。それもあってか、基礎的なことは押さえられている企業が増えた一方で、得た情報を上手く自社に落とし込めず思ったような成果につなげられていない企業も少なくない印象です。
今回のテーマ「データ連携」も同様です。当社は「マーケティング施策が商談や受注までつながっているか把握した上で施策を評価するべき」と考え、その重要性を伝えてきました。ここ数年でマーケティングデータとセールスデータの連携に取り組むBtoB企業が増え始めてはいるものの、自社の環境に適したデータ基盤を設計・構築できている企業はごくわずかだといえます。
樋口:データ連携機能を備えたデータ基盤無くして、データ分析はできません。つまり、自社にデータ基盤が整っていない状態でBI(ビジネスインテリジェンス)ツールを導入しても、データがつながっていないため有用な分析はできないのです。
樋口:様々な調査を見ると、BIツールを導入しても8~9割は活用できておらず、結局Excelで分析しているケースも少なくありません。
データ連携を阻む3つの課題
MZ:データ連携を適切に進められている企業が少ない背景を教えてください。
前野:「データの分散」「セールスとの連携」「技術面のハードル」という、3つの課題があると考えています。
たとえばWebサイトのデータはGoogle Analyticsへ、広告データは広告のプラットフォームで管理されます。他にもSFAやCRMなどデータが多種多様なツールに入っているため、それらをつなげて活用するデータ設計が非常に難しいといえます。これが「データの分散」です。
前野:またBtoBマーケティングは、リード獲得後の商談や受注を担当するセールスとの連携があってこそ成果を上げることができます。しかし、前述の通り全社データ基盤が構築されていないと、部門ごとに使うツールや見ているデータが異なるため、「セールスとの連携」が取りにくくなります。
そして、最後に立ちはだかるのは「技術面のハードル」です。実際に手を付け始めると様々なツールやデータをつなぎ合わせる必要があり、途方に暮れるマーケターも少なくありません。
BtoB企業がデータ連携の課題に立ち向かうカギとは
MZ:3つの課題を解消するポイントを教えていただけますか。
前野:データの分散では、実運用やデータの連携に知見のある人材が対応すべきです。しかし、そのような人材は日本では非常に少ないのが現状です。
自社にそういった人材がおらず採用も難しい場合、数多くの事例に対応しているプロである外部パートナーに依頼する方法もあるでしょう。またセールスとの連携の課題でも、全社共通のデータ基盤がない中では、当事者同士のスムーズな連携が難しい場合もあります。そのような場合には、組織を客観的に俯瞰して見ることができる第三者を巻き込むことが有効です。
そして技術面のハードルは、20年以上BtoB企業のデジタルマーケティング支援に取り組んできた当社にとっても大きな課題でした。Srush社とタッグを組んだことで、この長年の課題を解決することができました。
「BtoBマーケ支援のメディックス」×「技術のSrush」が生むシナジー
MZ:協業に至ったポイントと、同協業によって実現できることを教えてください。
根口:Srush社が優れたツールを提供されていることはもちろん、BtoB企業のセールス&マーケティングに関する理解が深く、当社と同じ目線で意見交換ができることが協業に至ったポイントでした。
山崎:「Srush」は、ノーコードで簡単に分散したあらゆるデータを統一し、分析に着手できるオールインワンのツールです。分析に至るまでのデータ加工の手間が少なく、各種ツールの連携から可視化までSrush上で完結できます。
山崎:私たち自身、データ連携に悩む当事者としての課題を一通り経験してきました。そのため、「当事者目線で最適なソリューションは何か」といったディスカッションができることも強みです。メディックス社のBtoBマーケティング支援に関する豊富な知見や実績とSrushの技術を掛け合わせることで、大きな相乗効果が期待できると考えています。
ポイントは「ミニマム・シンプル・早めのスタート」
MZ:メディックス×Srushで提供されるソリューションで、具体的に実現できることを教えてください。
前野:たとえば、Web広告の費用対効果が可視化できます。また、Google AnalyticsのデータとSFAやCRMを連携することで、売り上げに貢献している広告以外の流入チャネル・閲覧コンテンツも把握することができます。
BtoBの商材は検討から導入まで長い期間をかけて態度変容をしていくため、顧客が最初にWebサイトを訪れた時と実際に問い合わせする時に見たチャネルやコンテンツが異なる場合も少なくありません。そのため、行動履歴が重要です。データ連携によって、サービスの導入前、導入後の行動を可視化することで、勝ちパターンを導き出すことが可能となります。
MZ:成果につなげるポイントについて教えてください。
前野:「ミニマムから始めて徐々に広げていくこと」が大切だと思います。まずはデータ連携に取り組み、試行錯誤しながら自社に合った連携基盤を作っていくとよいでしょう。
樋口:定例会など会議体で使えるダッシュボードを一つ、作ってみることをおすすめしています。はじめに小さくマーケティング部門の目線でダッシュボードを作って運用し、営業や経営企画など他の部門へ広げていくイメージです。
データ分析プロジェクトでは多くの場合、時間やお金がかかりますし、担当者の異動や退職で本来の目的がわからなくなる場合すらあります。だからこそ、まずはミニマム・シンプルから始める姿勢が大切です。
前野:データの連携・活用は試行錯誤が必要で時間がかかる分、先行者有利な領域です。とにかく始めてみることが競合との差別化にもつながりますし、実際に走り出したからこそわかることも多いですね。
今後は「データの民主化」が重要に
MZ:最後に、今後の展望をお聞かせください。
根口:「Srush」で全社のデータ基盤を作っておけば、「どんな企業のLTVが高く、解約率が低いのか」「そういった優良企業はどのようなチャネルやコンテンツを見ていたのか」などをファクトベースで可視化できます。すると、データドリブンなカスタマージャーニーが設計できるので、精度の高い施策実行が可能になると考えます。データ基盤作りをSrush社、マーケティングの伴走をメディックスが担当することで、商談や売り上げにつながる本質的な支援をしてまいります。
前野:マーケティングとセールス/顧客データの連携が進んでいくことで、企業は顧客に対して、よりニーズのあるコンテンツの提供やコミュニケーションが可能になります。BtoBにおいても、このようなデータドリブンマーケティングが浸透していくことは、企業視点でも顧客視点でも非常にプラスだと思います。
樋口:データ活用・連携の際ポイントになるのは、多種多様なデータソースを取り込めるデータ基盤があるかどうかです。「Srush」は国内外問わず多くのデータを取り込めるよう常にアップデートしており、データを可視化・共有して全社で目線をそろえることが可能です。
私たちは「データの民主化」が今後より重要になると考え、「データを誰にとっても身近なものにする」ことをビジョンとして掲げています。
山崎:SaaSの乱立やプラットフォームの多様化によって、データ連携領域はさらに複雑になると見られます。またGDPR(EU一般データ保護規則)やCookie規制などの動きの中、自社でデータを管理する機運は一層高まるのではないでしょうか。だからこそ「Srush」のような導入ハードルが低いプロダクトを使ってミニマムでスタートし、データ活用に必要なノウハウを獲得していく形がお勧めです。
そして、データを語る際に避けられないのが生成AIです。生成AIが意識されずに日常業務に組み込まれ、当たり前のように活用される未来がすぐそこまで来ています。それに備えて今のうちからデータを集め、必要な時にすぐに活用できる仕組みを整えておくことをお勧めします。