「日本のまつりを探検する」体験を設計したキヤノンMJ
企業BtoBサイト賞のグランプリには、キヤノンマーケティングジャパン(以下、キヤノンMJ)の「まつりと|日本のまつり探検プロジェクト」が受賞。同サイトは、「日本のまつりを探検する」をコンセプトに全国各地の祭りを訪ね、集約したオウンドメディアだ。画像や動画をちりばめ、「祭りの発見」を提供している。

「特に注力したのはプランニング部分だった」とキヤノンMJの諏訪氏は振り返る。同サイトは元々文化庁が主催する、地域の伝統行事等のための伝承事業(公開支援)に参画したことがきっかけで生まれた。今回のプロジェクトを進めるにあたりキヤノンMJは三つの目標を定め、推進していった。
1.全国各地での祭りや伝統行事を記録する
2.地域・世代間での文化継承を推進し、地域の活性化に貢献する
3.日本中の人々に注目され、その価値について再認識できる
当初は1のBtoB(あるいはBtoG:Business to Government)的な要素が強かった。具体的には、祭りや伝統行事の保存会に向けて、支援メニューを用意。映像制作のほか、キヤノンMJとつながりのある祭りを専門に撮影する写真家による撮影、オンラインでの情報発信を行っていた。
「1・2で生成したコンテンツを集約し、これらを活用してオンラインで情報発信をするハブとして機能させました。その結果、BtoC向けサイトとしての側面も強くなっていきました」(諏訪氏)
同サイトは映像や写真の活用に加えて、情報の設計にも気を配った。タグ機能・マップ機能などを活用し、関連する祭りを回遊しやすい仕組みを整備。「次々と祭りを探検する体験設計を実現できた」と諏訪氏は語った。加えて記事コンテンツも拡充し、なじみやすいテーマから祭りや文化を知れるコンテンツを用意した。
結果、全国47都道府県を網羅したWebサイトを作ることに成功。また自治体や保存会からの満足度も97%以上となった。デジタルマーケティング研究機構は、多彩なコンテンツや見せ方がWebサイト内の随所に見られることを評価。「動画や画像を効果的に利用し、ユーザーに新しい祭りの発見を提供していることに加え、配色や写真の質、ユーザビリティの良さなど全体的なデザインも評価した」とコメントした。
明石観光協会が目指した「すべての人に優しいサイト」とは
アクセシビリティ賞のグランプリには、一般社団法人明石観光協会の「明石メルカート~召しませ、あかし~」が受賞。明石メルカートとは、明石観光協会が運営を行い、各出展者が自店舗で取り扱う商品を販売するモール型のECサイトだ。出店者は明石観光協会の会員となっている企業となる。取り扱う商品は、現在計186品だ。
同Webサイトは商品の販売ページのほかに、各店舗の紹介に加え、特産品を記事で解説。商品の製作風景を動画で紹介している。「コロナ禍を機に、本プロジェクトは動き出した」と明石観光協会の前川氏は振り返った。
「明石市が『SDGs未来安心都市・明石~いつまでも すべての人に やさしいまちを みんなで~』と定めていました。だからこそ、すべての人にやさしいサイトであることが求められていました」(前川氏)

同協会が目指した「すべての人にやさしいサイト」とは、障害者や高齢者を含むすべての人にとっても使いやすいサイトであること。そして公的機関としての規格をすべてクリアし、Webアクセシビリティに配慮したサイトであることだ。明石メルカートでは、サイト・商品ページ・カートの中に至るまで、「すべての人にやさしいサイト」の構築を行った。
結果2022年1月開始以降、1,700名を超える会員数がいる。前川氏は「65歳以上の方々の購入割合が高く、他年代と比較してもそん色のない値です。また、非会員でも購入可能なシステムの中で多くの方が会員になってくださっています」と語った。
デジタルマーケティング研究機構は、かなりハイレベルな戦いの中、誰もが使いやすいECサイトを実現した点を評価。「明石観光協会は、市の姿勢に合わせた、誰もが使いやすいECサイトを実現。専門家からも、障害がある方などにもアクセシブルなサイトを必要とする声も多く、最終審査委員からも高い評価を受けた」とコメントした。