本当に消費者を理解できている?確認するための四つの質問
出下氏が示したのは以下の四つの質問だ。
- 商品の売上と前年度比と競合の売上規模はいくらなのか。
- 1年間で約何人の顧客に商品・サービスを買われたのか。また、顧客のうちの新規購入者とリピーターの割合、リピーターのリピート回数。(WHOに視線を移した問い)
- 顧客がどのような習慣を持っているか。(WHOとブランドとの関わりが見えてくる問い)
- 総顧客数や購入量はどれくらいなのか、また、競合と比べた購入金額の位置関係(マーケットの中でのWHOとブランドとの相対的な位置関係が見えてくる問い)
このような質問を行った時に、売上の規模や前年比を説明できる統括者、ブランドマネージャー、マーケター、商品開発者などの担当者は多くいるが、その売上を作っている人の具体的な顧客像を明確に説明できる人はほとんどいないと出下氏は語る。
「売上はマーケティング施策の結果ですが、その結果を作っているのは消費者の心理と購買行動です。そして、これらの要素やマーケットは静的なものではなく、常に変化し続けています。だからこそ、効果的なマーケティング活動を行うためには、消費者心理や購買行動に目を向け、理解することが必要不可欠だといえるでしょう」(出下氏)
また、購買行動には、消費者がブランド・商品選択を行う上での意思決定の過程が含まれているという。つまり、購買行動がしっかりと理解できていれば、どのマーケティング活動が消費者の意思決定に影響を与えたかといった因果関係を捉えることが可能になるという。これができているか、改めて振り返ることを出下氏は勧めた。
マーケティングリサーチが抱える三つの役割
次に、出下氏はマーケティングリサーチの役割と活用について言及した。
マーケティングリサーチという言葉は、デービッド・アーカー氏によると「組織と市場の状況を結びつけるものである」と定義されている。組織と市場を結びつけるための情報の特定・収集・分析・解釈を行い、以下の4点の活用をすることが重要なのだという。
- 市場・消費者を理解する
- 問題や機会を識別する
- マーケティング行為の代替案を開発する
- 結果をしっかりと評価して未来へのステップを決めていく
では、リサーチを進めるにあたり、どのような思考が必要なのか。いきなりリサーチを進めることは危険であると出下氏は指摘する。リサーチを基にした施策の成功確率をあげるには、「本質的な問い」「課題設定」「仮説構築」ができているか、そして、これらをデータ分析の前に関係者で考え、議論することが大切だと語った。
このように、「問い」に対していきなりデータを見るのではなく、「課題設定と仮説」が必ず先に立ち、データを見るのはその後ということを徹底する必要があるのだ。加えて、問いを設定することでさえもパートナー企業に丸投げされているケースも多いが、絶対に事業者サイドで行うべきだという。
下図にも示されるように、施策立案に至るまでの過程には「問い」の設定、その問いに応えるための「課題抽出・設定」、課題に対する「分析と考察・提言」、考察を基にした「企画・検討・立案」という流れがあるだろう。出下氏はこの過程において、困りごと(課題)と解決の打ち手の間にある溝を埋めることがリサーチの役割だと語る。
このリサーチの役割は幅広いというが、大きく分けると次の三つだと出下氏は説明した。
- 消費者の意識や行動、その背景を理解する
- 顧客起点の価値を捉える
- 経営リスクを軽減させる
事業の成功確率を上げるためには、この三つの観点でマーケティングリサーチを行うことが重要となる。
では、ファミリーマートではどのようにマーケティングリサーチを実装し、推進しているのだろうか。