商品やブランドにとって、市場にある消費者のニーズや潜在的なインサイトを把握することは重要だ。しかし、売上に寄与するマーケティングリサーチの実装・推進が上手くできないことから多くの企業や業界内では、過去、何度もリサーチ不要論の話題は上がっては消え、を繰り返している。「MarkeZine Day 2024 Spring」では、ファミリーマートの経営企画傘下に、各部署とは独立した部門で経営層や各事業部に提言を行うためのマーケティング・リサーチ・データアナリティクス専門組織、Consumer Market Insight Research Group(以下、CMI)を創設し、そのチームを統括している出下浩司氏が登壇。MDプロセスにおける一連のリサーチ・データアナリティクスを実行してきたCMIの知見を基に、データアナリティクス・マーケティングリサーチの活用と効果について紹介し、マーケティングリサーチ不要論に答えを出した。
求められるのは「お客様のために」ではなく「お客様の立場で考える」視点
「すべてはお客様のために」という言葉は、顧客に寄り添った良い言葉だと感じる人が多いだろう。しかし、この言葉には、売り手側である事業者都合の要素が多く含まれているのだとファミリーマートのConsumer Market Insightでマーケティングリサーチャー、データアナリスト、データサイエンティストの統括を行う出下浩司氏は語った。
「本来、事業者には『お客様のために』ではなく、『お客様の立場で考える』視点が求められています。この二つは似ているようで意味は大きく異なります。実際、消費者から選ばれる商品、いわゆる売れる商品は、他社よりも優れたスペックを持っているもの、または自社が最高品質だと考えているものであることは大前提ですが、それでもまったく足りません。
事業者は、商品を買う行動の選択権や意思決定権は消費者側にあり、その上で彼らが『魅力的な商品』だと認識してはじめてその商品が選ばれることを頭に入れておく必要があります。そのため『これは良い商品だ』とか『必ず売れるはずだ』というような独りよがりの視点でのもの作りをしてはいけません。この視点は、頭ではわかってはいても、モノづくり・モノ売りをしている側にいったん入ってしまうと、かなりの確率で錯覚する落とし穴の一つだと感じています」(出下氏)
消費者理解はブランド・商品すべての決定事項に関わる
では、そもそも商品開発においてなぜ消費者理解が必要になるのか。
本来事業を進める上では、ATL(Assessing The Landscape)といわれるような戦況分析を実施する。いわゆる戦略フェーズにおいて、土台となる最も重要なプロセスだ。
その上で下図の通り、事業のWho/What/Howを確かめ、決定する。出下氏によると「これらの工程の中心には常に消費者がいる」のだという。つまり、消費者理解は、すべてのブランド・商品の決定事項に関わることを意味する。
この部分を軽視してしまった場合、どんな施策を行っても消費者にとって価値あるものを届けることはできない。それどころか消費者への提案すらもできないことを意味する。いわゆる戦略フェーズにおいて、土台となる最も重要なプロセスだ。
コーゼーション的アプローチの場合、価値は事業者側が作り出しているのではなく、もともと消費者の中にある。事業者側はあくまで、まだ自身が認識していない価値に寄り添って提案してあげることで意味を成す。その点を誤解していては消費者へ価値を届けることは決してできない。
さらに、マーケットや消費者の嗜好性の多様化が進んだことで、商品を性能で差別化することは困難になった、このような環境下で求められるのは、「モノ売り=いかに素晴らしい商品か」から「コト売り=その商品やサービスで何を解決してあげるのか」、人をしっかりと見つつ視点で捉えるビジネスへのシフトだ。商品やサービス自体の利便性を売るのではなく、その商品によって解決できる消費者課題を考えることが重要だといえる。
出下氏によると多くの企業やマーケターがこれを徹底できていないという。「『潜在的なインサイト』の発見による一発逆転にばかり目が行きがち」であり、ともすれば「顕在化したニーズすらもブランド・商品・サービスの価値に落とし込めているのか疑問が残る」と話す。
さらに、出下氏は次のように続けた。
「『インサイトの発見をしたい』という言葉を耳にする場面が多いですが、そのインサイト自体も言葉が独り歩きしており、その定義も人によって異なります。そのため、定義を尋ねても出てくる答えはインサイトからは程遠いものばかりです。これもリサーチに求められる期待値とのギャップを生む原因です」(出下氏)
ここで出下氏は聴講者の自分ごと化を促すため、自社が抱えるブランドや商品、サービス、顧客についてその理解度を測る四つの質問を示し、そのうちどこまで説明できるかを尋ねた。
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畑中 杏樹(ハタナカ アズキ)
フリーランスライター。広告・マーケティング系出版社の雑誌編集を経てフリーランスに。デジタルマーケティング、広告宣伝、SP分野を中心にWebや雑誌で執筆中。
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