安く、早く、賢い失敗を組織の「是」とする
西口:先の成功例と失敗例の違いはつまり、熱量の差なのですね。結果を継続的に生み出すための秘訣は、どういったことだと思われますか?

松山:早く、安く、賢く失敗して、そこから学ぶサイクルを回していくことだと思います。もう1つは、戦略的に試行錯誤することです。
闇雲にあれこれやるのではなく、仮説や意思を持って試行錯誤する。その過程で遭遇する失敗はむしろ糧になります。意思をもって実行した結果なら、次に活かせる可能性もすごく大きいですから、称賛します。これを当社として組織の「是」にしました。
西口:組織の「是」とは?
松山:失敗を恐れる社風があることも入社早々から感じていたので、それを変えたかったのです。社長になってからも、全社員となるべく顔を合わせて、数人~15人くらいのオフレコのミーティングを重ねています。先のように闇雲な失敗を推奨するのとは違うので、誤解のないようにしながら、「失敗を恐れるような組織からはイノベーションは生まれないよね」と話しています。
本当に顧客が真ん中にいるか、問い続けよう
西口:そういう社風へ変えようとしてきた結果、今の業績につながっているのだという印象があります。最後の質問です。マーケターと経営者はどう進化していくべきだとお考えですか?
松山:やはり、「本当にお客様が真ん中にいるか?」を問い続けることだと思います。どの会社も顧客志向を唱えますが、本当にそうなっているか、胸に手を当てて社長から新入社員まで考え続けること。それができている会社は、マーケティングだ営業だと機能で分けなくても、一人ひとりの真ん中にお客様があるので、「顧客に価値を届けるのが我々の仕事」という共通認識でしっかりまとまることができると思います。

西口:顧客を真ん中に置くことを徹底するように、進化するべきですね。
松山:そう思います。私の理想の組織は、そういう組織です。顧客が真ん中にいて、そこに価値を届けるために皆が動けば、管理統制の必要なく、自律分散で動けます。実際にやろうとすると大きな反発も受けますが、それに負けない勇気をもって取り組み、1つでも成功例ができれば、それが社内の風土になっていきます。
私たちも引き続き頑張ってやっていきますが、皆さんもぜひそういう気持ちで、マーケティングや経営を楽しんでいただけたら嬉しいです。