行動変容が起こせる範囲と起こせない範囲を分離する
多くの企業が、施策による顧客の行動変容を期待するが、行動変容を促すことは思っているよりも難しい現状がある。ここで柳下氏は「行動変容施策を行う上で、勝ち筋の見極め方はあるか?」と質問した。
「まずは、『何をしても買わない人たち』は一定数いますから、その人たちをはっきりと分けることです。次に、買う可能性のある人たちを、『放っておいても買う人』と『何らかのアクションがあることで買う人』に分類します。後者に対し、どのタイミングであれば意思決定に影響を与えられるかを考慮するのが重要なポイントです」(松本氏)
柳下氏は、より具体的に「設計図が必要だ」と述べる。
「ペルソナや、カスタマージャーニーマップを事前にある程度描き、検証の指針にしていくことは基本的ですが有効です。ただしその前段に、何を持って『成功』とするのかという定義づけをしていくことも、押さえておきたいポイントですね」(柳下氏)
セッション終盤、松本氏は休眠顧客の復帰施策について紹介した。この施策においても、「行動変容が起こせる範囲と起こせない範囲の分離」を意識するだけで、高度な解釈が可能になると話す。
「ある程度習慣化されてしまった行動を企業側が変えるのは難しいです。それは裏を返すと、休眠顧客に関しても、『その商品で得ていた機能を人生で享受しなくなった』というよりも、『その行動や習慣自体は残っていて、行動の枝葉部分が変わり他社製品に購買が移ってしまった』と考えるほうが妥当だということです。そのような場合、小手先の復帰施策を行うよりも、顧客の行動習慣が変わった商品側の原因の解消方法を考えるのが、筋の良いアプローチと言えます」(松本氏)
組織としてデータについて会話できる状態にすることが理想
最後のトピックは、「意味のあるデータ分析が組織としてできる状態まで持っていくために必要なこと」である。正しい分析手法を理解することだけでなく、適切な効果が出る施策の考え方をインストールすること。その両面を“組織として”できる状態になることが、組織に求められることだ。
「単にデータを集めて何かしらのアウトプットを出すだけなら、3ヵ月くらいである程度可能だと思います。ただ、本当に質のいい効果量が出せて、きちんと解釈ができるレベルまで持っていくためには、データ基盤を入れ、データを集められる状態にするというシステム的側面、それを使って分析・解釈していくチーム作りの側面が欠かせません。これを0から実現するには、少なくても1年~1年半くらいの時間は必要だと考えています」(松本氏)
データがシステムの中に蓄積されているだけの状態と、本当に分析に使える状態のデータには隔たりがある。そこを埋めるにはチームメンバーのデータ活用に関わるスキルセットとデータの蓄積、加工、および分析環境の両面を整える必要がある。
松本氏は最後に、今回紹介した重要ポイントをまとめ、セッションを締めくくった。
「顧客の行動分析においては、時間の前後推移を見ることがまず大きなポイントです。行動変容については、生活者視点、行動心理学的視点を忘れずに解釈する必要があります。そして、そのような施策・分析を回すためのチーム、環境作りは不可欠です。弊社では、アウトプットを見越したデータ基盤の構築から施策フェーズのコンサルティング、分析までを支援しておりますので、お悩みや課題がある場合はお気軽にご相談ください」(松本氏)
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