OpenAIの「Sora」は資金調達のイントロ
2024年2月15日、OpenAIの動画生成AI「Sora」が発表された。その驚異的な能力(コレができる、アレができる!)に関心が集まったと同時に、5~7兆ドル(約750~1,000兆円超)もの資金確保の構想も報じられた。
世間は2023年11月のサム・アルトマン氏のOpenAI退任騒動がなぜ発生したのかをすっかり忘れてしまったようだ。「千兆円級の資金が必要になるぞ!」の騒ぎが沸き起こる前に、まずは足元を綺麗に掃除(資金調達の透明性を確保)しておこうとしていたのが、あの2023年末の騒動であった。
公式発表はされていないが、非営利法人であるOpenAI,Inc.理事会は2022年末時点の9名体制から暫定の3名体制に移行。金庫番役は退任し、元米国財務長官ラリー・サマーズ氏を含むガバナンス体制になっている。
巨額資金調達を達成するまでのホップ・ステップ
Soraは当面の間は一般公開せず、デザイナーや映画の制作者などが限定的にアクセスを許されるという利用実験の段階であり、世界中のほぼ誰もがまだ利用していないという状況。それでも、Soraは世界中にトキメキを生み出した。
スタートアップ(未知の新規事業)においては、このような興奮をどれだけ世に広められるかが、初期の価値を生み出す鍵となる。右肩上がりの期待値を作ることが、次なる資金調達に向けたバリュエーション(企業の価値評価)の向上につながるからだ。OpenAIの満を持してのSoraの発表は、巨大な資金調達に入る前段階として、市場での期待値を右肩上がりにしていく過程での最初のホップと見える。
仮にOpenAIが2023年末の足元の掃除→未来価値の提示(Soraの発表)→期待値の右肩上がり成長→巨額資金調達のホップ・ステップで1,000兆円級まで引き上げることに成功したとする。現在のところ世界トップの企業価値を誇るMicrosoftとAppleの二社を足してもおよそ800兆円級。OpenAIの1,000兆円級の調達とは、“世界史上”最大の二社の企業価値をも凌駕する規模ということだ。OpenAIに兆円規模で出資するMicrosoftはまだこの資金調達について特にコメントを発表していない。
Soraによる「のろし上げ」でワイワイと市場の関心や期待を膨らませ、天文学的な規模の資金調達へステップを踏み始めたわけだが、一発花火で終わってもいけない。継続的な話題を作る必要もある。イーロン・マスク氏によるOpenAIへの提訴も、サム・アルトマン氏との仲を思えば、世の関心を得続けるために悪役を買って出たとも考えられる。