経営戦略における組織・人材の育成強化
──重点戦略の中には「リソース戦略」もあります(図表1)。マーケティング組織・人材の強化育成も、この中に含まれていますか?
はい。社員一人ひとりの生産性向上には、特に力を入れて取り組んできました。営業だけでなくマーケティング部門の社員についても、どれだけお客様に貢献しているか、事業に利益をもたらしているかを定常的に測り、トラッキングしていく試みを行っています。
また、弊社は買収合併により海外のグループ会社を増やしてきたという経緯があるので、どうしてもロールをグローバルで統一するのが難しいというハードルがあったのですが、グローバルでジョブ型の徹底も進んできています。マーケティング組織でもジョブレベルをきちんと定義しており、たとえばマーケティング・アナリストは日本でもイギリスでも同じジョブの定義に基づき、同じ基準で評価を受けられるようになっています。これにより、世界中、どこでも働けるようなグローバル人材を育成していく狙いです。
このようにお話しすると、厳しいイメージを持たれることもあるのですが、良い意味での緊張感を作れていると感じています。年功序列での評価ではなく、自分の成果がきちんと評価されるようになっていますし、ジョブ型への移行にともない、自分のやりたいロールに応募=ポスティングできるよう制度も変化させています。実際、ポスティングの制度はよく使われています。実に7,500人近くがこの3年でポスティングの制度を利用しているんですよ。
──ロールチェンジをする際、新たに学ぶ機会も提供されているのでしょうか?
もちろんです。マーケティングでは、ストラテジー/プランニング/エグゼキューションの大きく3つに領域を分けており、「市場分析」「効果検証」といった具合にさらに細分化してロールを設定しています。各ロールで学習が進んでいくようエキスパートを設けて教育の機会を作っています。
加えて、ITSMAなどグローバルで権威のあるマーケティング認定試験の合格をサポートしており、毎年30〜40名の認定者を出しています。富士通はこんなことを勉強させてくれるんだ、と知った方々の転職希望も増えています。
私も、フィールドマーケティングやブランディングなどを実務で経験する中で、自身のスキルを広げてきました。今、CMOというポジションにいるのは、そうした積み重ねがあるからです。マーケターにおいては、こうしたスキルアップやリスキリングの機会が非常に重要だと思います。
──最後にマーケティングの展望をお聞かせください。
入社時から私のゴールは変わっていません。富士通でブランディング×デマジェンの2軸を両立させることを目指しています。ブランディングはアートであり、デマジェンはデータを用いたサイエンスです。アート×サイエンスをグローバルで進化させていき、パートナー企業の皆さんとコラボレーションしながら各々のパーパスを実現させていくことが、今後も大きな柱になります。
