総広告費、前年に続き7兆円超え 人流回復も後押しに
──今回は「日本の広告費2023」について伺います。まず最も注目すべきトピックスを教えてください。
北原:一番大きなトピックスは、総広告費が7兆3,167億円となったことですね。2022年に7兆円を突破し過去最高となりましたが、それをさらに上回りました。過去にも7兆円超えとなったことはありますが(2007年)、そこから広告市場は伸びていかなかったので、直近の継続的な成長は注目すべき点です。
北原:中でも見ておきたい事項としては「人流回復」が挙げられます。2023年5月に、新型コロナウイルス感染症が「5類感染症」となりました。それにともない、イベント・展示・映像ほかが前年比128.7%と高い伸びを見せました。しかしまだコロナ禍以前の水準までは回復していない状況です。
インターネット広告費が過去最高額を更新。総広告費の4割以上を占める
──インターネット広告費は、今回の調査でも過去最高額を更新しましたね。
北原:人々の情報摂取行動やコミュニケーション活動がインターネットにシフトしているこの長期的なトレンドが継続しているからこその結果と言えます。
今回、総広告費で最高額を更新した最大の要因もインターネット広告費によるものです。3兆3,330億円、前年比107.8%、総広告費に占める割合も45.5%にまでなりました。インターネット広告費を押し上げた要因の一つとして、検索連動型広告が1兆729憶円と、初めて1兆円を突破したことが挙げられます。
広告主の動きとして昨今は、短期的な売り上げに対してどれだけ寄与しているかを重視しています。インターネット広告の場合は、結果を数字で早く把握できますので、そのトレンドが依然進行している流れです。
北原:取引手法別でインターネット広告媒体費を見ると、運用型広告は2兆3,490億円で、インターネット広告媒体費に占める構成比は87.4%と9割に迫る結果となりました。企業としてもDX化に始まる効率化や、人々の情報接触がスマホを中心としたデバイスへと変化してきたことが大きいです。
また動画広告は、前年比115.9%、6,860億円とインターネット広告種別の中で最も高い成長率を示しています。動画配信サービスの普及や、静止画と比べて注目を浴びやすいことから動画の需要が高まっています。
森永:また、物販系ECプラットフォームに出店している企業が、そのサイト内で広告を出稿する流れも広がっています。コロナ禍が明けても、増加トレンドが継続している状態です。