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形のないものにどう価値をつける?JTBと損保ジャパンから学ぶ“7P”を活用した戦略立案

 多くの商品・サービスが提供され、機能面での差別化が困難な昨今、有形の商品においても目に見えない付加価値が求められるようになっている。では、無形の価値を消費者に提供するためにはどのように体験設計を行ったらよいのだろうか。マーケティングを日本のビジネスの標準スキルに育てることと、中小企業・スタートアップ・ローカルビジネスのポテンシャルを引き出し、最短距離で成功に導くことの二つを目標とするマーケティングギルドコミュニティ(MGC)では、2024年4月17日に定例会を実施し、損害保険ジャパン(以下、損保ジャパン)でマーケティング部の部長を務める関口憲義氏とJTBでCMOを務める風口悦子氏が、「形のないマーケティング」をテーマにトークセッションを実施。サービスマーケティングで活用される7Pの考え方を紹介した。本稿では、その詳細をレポートする。

サービスマーケティングの差別化の秘訣、7Pの考え方

 まず、関口氏は、コトラーが提唱する7Pの考え方を紹介。サービスマーケティングにおいては、マーケティングの理論で要素としてよく挙げられるProduct・Place・Promotion・Priceの4Pに、People・Physical Evidence・Processの三つを加えた7Pを重要とする理論だ。関口氏はこれら三つのPが持つそれぞれの意味を次のように説明した。

「Peopleには従業員や顧客の教育訓練といった意味が含まれています。これには、マーケティングのチームを構築していくための企業文化・価値の醸成や、顧客満足度(以下、CS)向上のための従業員のトレーニングなども含まれています。Physical Evidenceでは、サービス利用時に利用者が感じる独自の価値を指します。これには、事業者独自のCXデザインを始め、従業員の服装など本来であれば有形のものをサービスの世界観を作る要素の一つとして考える必要もあります。そして、Processは、サービスを顧客に提供する手段やその過程を考える部分です」(関口氏)

損害保険ジャパン株式会社 執行役員待遇 マーケティング部 部長 関口 憲義氏

 これに対し、風口氏は「この三つのPはJTBでも重要視しているポイント」だと語った。

 差別化が難しい無形商材のマーケティングにおいて、“社員”の育成方法や、顧客への“提供価値”の設計、顧客が購買に至る意思決定の“過程”は、強みにもリスクにもなり得るからだという。

株式会社JTB 執行役員 ブランディングマーケティング担当 広報担当 チーフマーケティングオフィサー(CMO) 風口 悦子氏

 では、7Pの理論を活用してどのように戦略策定、企画立案をすれば良いのだろうか。両氏は本セッションのテーマに合わせてPeople・Physical Evidence・Processの3Pにあえてフォーカスし、各社でのベストプラクティスを紹介した。

目に見える道具の活用で目に見えない旅の体験を設計

 まず、風口氏は、JTBによる二つの事例を紹介。一つ目は、同社が実施した「ホスピタリティプログラム」だ。同プログラムは、スポーツの観戦チケットと宿泊先、移動に使う交通機関のチケット、宿泊先、滞在先の体験をJTBのブランディングの下で一つのプランとして提供するもの。直近では、ソウルで実施されたMLBワールドツアーの開幕戦でのプログラムを提供したという。

 風口氏はこのプログラムが実現した背景にも、3Pの要素があったと語る。まず、Peopleの要素として話すのが、同社が2023年に刷新した行動指針「The JTB Way」の社内浸透だ。

「The JTB Wayは当社グループの社員共通の行動指針で、ベースには『信頼を作る』『挑戦し続ける』『笑顔をつなぐ』という考え方があります。この考え方の浸透のために社員一人ひとりが自主的に考えるワークショップの実施など、積極的に行ってきました。」(風口氏)

 このThe JTB Wayの浸透により、顧客に対して提案を行うスタッフから、ツアーに同行するスタッフまであらゆる社員が、The JTB Wayを基準に高い質のサービスを提供することができたという。

 次にホスピタリティプログラムを形成するPhysical Evidenceの要素としては、旅マエ・旅ナカでの体験設計がそれに当たる。同プロジェクトでは、現地で民族衣装を着用できる文化体験や、元プロ野球選手をサプライズで招いた野球解説なども用意。そして、これらの体験をJTBブランドで一つにまとめることで、ツアーの最初から最後まで「JTBのツアーであること」を意識してもらう仕組みを作ったという。

 加えて同社は、ツアー内で使用するグッズをあえて事前に送付。こうすることで、旅マエからのワクワク感を醸成した。このように、目に見えない旅において、目に見えるものを使うことで体験を設計したという。

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この記事の著者

土屋 典正(編集部)(ツチヤ ノリマサ)

法政大学法学部を卒業。新卒で人材派遣の会社にて営業職を経験し、翔泳社に入社。MarkeZine編集部に所属。 

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2024/06/06 09:00 https://markezine.jp/article/detail/45686

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