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『MarkeZine』(雑誌)

第106号(2024年10月号)
特集「令和時代のシニアマーケティング」

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【特集】ターゲティング大変革期の到来

なぜその手法を選ぶのか?ターゲティング大変革期に求められる“目利き”

 Google Chromeにおける3rd Party Cookieのサポート廃止は、Web広告業界に“大いなるリセット”をもたらしたと言えるだろう。ユーザーのプライバシーを無視したターゲティング手法は淘汰され、健全かつ有効な広告配信を目指す広告主は打ち手の見直しを迫られている。Cookieベースのターゲティングに替わる新たな広告の届け方を紹介する本誌。巻頭記事にあたる本稿では、かつてアドテク企業において広告の第三者配信を推進する立場にあった渡邉桂子氏に、ターゲティングの現在地と手法を見直す際のポイントをうかがった。

※本記事は、2024年7月刊行の『MarkeZine』(雑誌)103号に掲載したものです

何をもって「有効」とするか

──3rd Party Cookieの規制が始まって久しいものの、ポストCookie時代のターゲティングは実際どこまで進んでいるのでしょうか? 「Googleをはじめとする主要プラットフォーマー」「広告代理店・アドテク企業」「広告主」の3つの観点で、進捗を教えてください。

 プラットフォーマーについては、ユーザーのプライバシーを保護するために、広告主側が保有するパーソナルデータとユーザーIDを掛け合わせてターゲティングの精度を高める動きが主流となっています。

株式会社ビーアイシーピー・データ 代表取締役 渡邉桂子(わたなべ・けいこ)氏 2004年アイティメディアに入社。広告営業としてサイト分析ツールなどを活用。その後、電通レイザーフィッシュ(現・電通デジタル)、サイズミック・テクノロジーズ、楽天において第三者配信、位置情報などを活用したソリューションの導入支援や商品開発、海外ソリューションのローカライズ、パートナーアライアンスなどを担当。2018年12月より現職。
株式会社ビーアイシーピー・データ 代表取締役 渡邉桂子(わたなべ・けいこ)氏
2004年アイティメディアに入社。広告営業としてサイト分析ツールなどを活用。その後、電通レイザーフィッシュ(現・電通デジタル)、サイズミック・テクノロジーズ、楽天において第三者配信、位置情報などを活用したソリューションの導入支援や商品開発、海外ソリューションのローカライズ、パートナーアライアンスなどを担当。2018年12月より現職。

 一方で、Cookieが実現してきた「広告主側にとって快適な広告体験」を担保するべく、代替手法の技術学習を進める企業もあり、その代表的な例がGoogleのプライバシーサンドボックスです。ただ、Cookieとまるっきり同じことが可能な代替策を開発することは現実的に難しいため、Cookieの利便性を引き続き享受したい広告主や広告代理店の期待値に対して、大きなギャップが生じている気はします。いずれにせよ、各プラットフォーマーに閉じた進化がますます加速し、プラットフォーマー依存度はさらに高まるでしょう。

 広告代理店においては「ターゲティング広告=成果が出しやすい」という手応えが明確だったため、その手法に最適化しすぎた反動が見られます。かつてマーケティング活動は「マス」「デジタル」「CRM」に分類され、多くの広告代理店がデジタルの中でも“獲得系”と呼ばれる分野に特化していましたが、もはやその分類自体を再考する必要があるでしょう。過去の延長線上で狭義のデジタル広告を実現するためにCookieの代替手法を求めるのではなく、顧客体験全体を意識し、打ち手を再考している広告代理店が、高い価値を発揮すると思います。

 広告主も、デジタルマーケティングの一部を切り出してアウトソースするのではなく、顧客体験を設計する観点で広告代理店と協力する必要があります。検討すべきテクノロジーがあまりにも多く、自身ですべてを追うのは大変です。専門家の力を借りるのは大前提ですが、パートナーの提案を鵜呑みにするのではなく、しっかりとした判断軸を持ちましょう。テクノロジー偏重になると忘れられがちな、法律を含めた外的変化を敏感にキャッチし、プライバシーガバナンスの視点を目の前の業務に取り入れる姿勢が広告主には求められます。プライバシーポリシーの改定なども、その一例です。

──“大いなるリセット”によって、ターゲティングの在り方が健全化に向かっていることはポジティブに受け止めるべきです。しかしながら、広告主目線では健全なターゲティングを有効に機能させるために、超えなければならない壁がまだまだありそうです。

 そもそも「ターゲット(標的)」という言葉が健全ではないという話はさておき(笑)、何をもって「有効に機能している」とするかだと思います。たとえばリタゲ/リマケ広告においては「ユーザーが最後にクリックor接触した広告=有効」とする考え方が代表的でした。そのような評価方法も、技術の進化とともに高度化しつつあります。たとえばGoogle広告の新プロダクト「P-MAX」では、Googleプロパティ全体における接触の最適化が可能です。また、顧客の質を考慮する「Value Based Bidding(VBB)」の考え方を評価指標として取り入れる企業もあります。このように、新しい評価指標に合わせて運用していくことが重要です。

 大いなるリセットは今に始まったわけではありません。既にAppleでは、Intelligent Tracking Prevention(ITP)によって広告の効果が測定できなくなっているわけですから、Cookieが使える/使えないでターゲティングの有効性が変わるような話ではないのです。一方通行になりがちなターゲティング広告を、どれだけ生活者目線で捉え直すことができるか。ここが鍵だと思います。

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この記事の著者

渡辺 佳奈(編集部)(ワタナベ カナ)

1991年生まれ。慶應義塾大学環境情報学部を2013年に卒業後、翔泳社に新卒として入社。約5年間、Webメディアの広告営業に従事したのち退職。故郷である神戸に戻り、コーヒーショップで働く傍らライターとして活動。2021年に翔泳社へ再入社し、MarkeZine編集部に所属。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2024/07/26 09:30 https://markezine.jp/article/detail/45733

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