リテールのマーケティング、最大の課題は
MZ:コンサルティングを行う的場さんから見て、リテールマーケティングの課題をお聞かせください。
的場:代理店サイドもクライアントサイドも、企業内で対応する部署がサイロ化されていることが大きな課題だと考えています。
ECと一口にいっても、自社サイト、Amazon、楽天など数多く存在します。メディアだと検索型広告、SNS、Amazonなどがあります。そうした中で「検索型広告の運用」「SNSの運用」「Amazonの運用」や「Amazonだけ対応する部署」「楽天だけ担当する部署」など、組織が大きくなればなるほど細分化されている現状があります。
MZ:具体的にはどういったことがネックになっていますか。
的場:実際に消費者が購入する場面を想像してみてください。最初にGoogleで商品を検索した際にGoogle Shopping Adsで商品を見て認知し、離脱してAmazonで再検索して購入する。あるいは、その逆のパターンもあります。リアル店舗に行った際に値段を比べるため、その場でAmazonの商品を検索することもあるでしょう。
データで紐づけることのできない、単一プラットフォームで購買が完結しないカスタマージャーニーがあると認識しているにもかかわらず、個々のメディアやリテールチャネルのデータだけを分析している状況では、消費者が実際に購買に至った背景やストーリーまで読み解くことは難しいといえます。
だからこそリテールにおけるデジタル施策を個別に分断するのではなく、統合プランニングが重要になっています。さらに池城さんがおっしゃるように、リアルとオンラインの販売も連携していくことが必要です。データ分析は大切ですが、それだけでは足りません。今後のマーケティング施策では、データで裏付けできない、読み解けない消費者の購買ストーリーまで想像し補完することも一層重要になってくると思います。
複数ECサイトのデータを統合分析
池城:データ分析は重要ですが、マーケターの想像力もデジタル戦略において大事な要素の一つだと思っています。お客様の購買行動を“自分ごと化”し、自分だったらどうかを考える。たとえば、店頭で製品を見に行ったが購入せず、Amazonレビューを確認し、結局キャンペーンを行っていたブランド独自のECサイトで購入するケースは、皆さんもあるかと思います。
MZ:プラットフォームを横断して様々なデータを集約するだけではなく、データ分析の持つ役割がさらに重要になりそうですね。
的場:その通りです。そのため当社ではプラットフォームやツールの提供だけでなく、データの観点からのサポートも重要視しています。
データを提供するだけでは、その見方や消費者の行動の「行間部分」まで読み取ることはできません。当社ではBIアナリストを積極的に採用し、プラットフォームやツールの提供だけではなくデータを読み解き、打ち手を示すところまで一貫したサービスを提供しています。
MZ:各ECサイトのデータを統合的に分析・判断する環境を実現させるには、ハードルが高いと感じるマーケターも多いのではないでしょうか?
的場:確かに組織規模が大きくなったり、逆にリソースが限られていたりする場合、各ECのデータを統合・分析するのは難しいかもしれません。
当社ではデジタルシェルフトラッキングツールの提供を新たに開始します(2024年6月24日にサービス開始)。売り場や特定ワードでSOV(Share of Voice)が取れているか、また価格変動や在庫切れなどを確認できます。
的場:また、2024年中にはマーケットシェアトラッキングツールもリリース予定です。このツールを用いることで、Amazon、楽天、Yahoo!、Qoo10、@Cosme、ZOZOなど多くのリテールで自社のSKU(Stock Keeping Unit:商品の最小の管理単位)のみならず、競合のSKUの想定売り上げや販売ユニット数などのデータを取得でき、1P/3Pと掛け合わせて確認することや、売れているSKUとそうでないSKUの商品タイトルの違いなども可視化。統合的に分析することが可能となります。
競合他社の状況を把握することで、トレンドや他社と自社との施策の違いなどを把握でき、より消費者目線に即した戦略を打ち出せるようになります。
池城:ECサイトを横断してデータ分析ができるのは、メーカーとして素直にうれしいですね。こうしたツールがあると、大きな組織で部署や担当をわける必要がある場合もAmazonや楽天など個別最適な施策ではなく、全体を見通した統合的で効率的な施策実現につながりそうです。