SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

直近開催のイベントはこちら!

MarkeZine Day 2025 Retail

西口さん!難しいことはわかりませんが、マーケティングで一番大事なことを教えてください

【マーケティング入門第13回】顧客数、購入単価……どうなると売り上げがアップしますか?


ロイヤル顧客につながる新規顧客を増やしていく

MZ:そのままいったら、縮小する一方ですね。それで、どうされたんですか?

西口:大きく2つのことを同時に進める必要がありました。一つは、16%のロイヤル顧客を減らさず、もっと増やせるよう、喜ばれる提案をすること。もう一つは、新規顧客の獲得に費用をかけすぎていたのでそれを見直しながら、できるだけ1回きりで終わらない顧客に買っていただける提案を行うことです。

 たとえば、ロクシタンはギフトの売り上げが大きいのですが、それだけだと一回購入で終わるため、かけた費用を加味すると利益は生まれません。しかしながら、どなたかのプレゼントのためにギフト商品を購入をする人に、ご自分用のスキンケアサンプルを差し上げると、スキンケアを次に自分用として買っていただけやすいとわかったので、それを推進し2回目購入を促すなどです。

 新規顧客獲得と集客向けにギフトの最大化、そしてギフトの側に必ずスキンケア商品を陳列して、来店時時にギフトだけでなくスキンケアの紹介とお薦め、そしてサンプル使用促進の掛け合わせで、短期間で利益を改善することができました。

MZ:やみくもに新規顧客の獲得をしようとしてはいけないし、かといってロイヤル顧客だけに振ってもその数が増えないというわけですね。

西口:そうです。マーケター初心者の方は、業務上で利益まで俯瞰することは少ないかもしれませんが、短期と長期での「売り上げと利益と顧客構造(どのような顧客がどの程度いるのか)の関係」を頭に入れておくことは大事です。

 価値を感じてもらえるプロダクトであれば、消費量の増加につながりますし、異なるプロダクトの同時購買や追加購買にもつながります。ですが「1回きり」で終わるのは、「便益と独自性がありそうだ」と思って購入したが使用後に価値を感じられなかったわけなので、その顧客が関連商品や関連サービスを買うこともないでしょう。

 先の掛け算「売り上げ=顧客数×単価×頻度」はとてもシンプルですが、それぞれを数値で押さえているマーケターは少ない印象です。もちろん、メーカーや小売りなど厳密に顧客数を出せない業態もありますが、おおまかな増減を把握できていないと、今は何に注力すべきかがわかりません。

因数分解できていないと、注力点がわからない

MZ:「売り上げが下がっているからキャンペーンをする」といっても、新規顧客を増やすためなのか、単価の低下を食い止めるためなのかで、内容が変わってしまうのですね。

西口:はい。プロダクトの売り上げが伸びない状況を打破するために、新商品やバージョン違いの製品を出すことがありますが、短期で売り上げが上がってもリピート性が低く累計で利益性を下げてしまうような、中途半端な価値を量産する方向へ進むことが少なくありません。プロダクトの売り上げが伸びていないなら、次のようなことを考えます。

(1)プロダクトに価値を見出す潜在的な顧客に届けられていない
(2)届ける顧客が間違っている、または届けるべき顧客が明確になっていない
(3)そもそも便益や独自性が弱く、顧客が価値を見出すに至らない

西口:(1)は届け方、つまりHOWが間違っているので、潜在的な顧客に届く方法を見直す必要があります。(2)はWHOを正しくつかめていないという問題ですね。誰がそのプロダクトを買うのかがわからないと、どれだけプロダクトを工夫したり増やしたりしても、売り上げ増は難しいでしょう。仮に増えても、その要因がわからないので再現性がありません。(3)は言わずもがなですがWHATの問題なので、プロダクトの強化改善が必要です。

 しっかり顧客理解ができていて「WHOとWHATの組み合わせ」がつかめていれば、(2)や(3)のようなことは起きません。売り上げを上げるために、ここでも最も重要なのは「誰が顧客なのか」を定義することです。その前提で、3つのうちどれが問題かをつかみ、適切な打ち手を検討していくとよいでしょう。

西口氏のマーケティング入門連載【第12回】はこちら!

西口氏のマーケティング入門連載【第14回】はこちら!

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • Pocket
  • note
西口さん!難しいことはわかりませんが、マーケティングで一番大事なことを教えてください連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

吉永 翠(編集部)(ヨシナガ ミドリ)

大学院卒業後、新卒で翔泳社に入社しMarkeZine編集部に所属。学生時代はスポーツマーケティングの研究をしていました。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

MarkeZine(マーケジン)
2024/08/30 13:39 https://markezine.jp/article/detail/45768

Special Contents

PR

Job Board

PR

おすすめ

イベント

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング