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テレビはどう生き残るか~鍵を握る「インプレッション取引」を成功させる仕組みとは~

テレビCMセールスに迫る変革の時。「GRP取引」から「インプレッション取引」へ

テレビCMとデジタル広告、「1インプレッション」の価値は同じか?

 まずはCMの受容性についてです。

 テレビCMは、半世紀以上の長い期間を経て“視聴者とテレビ局の間での和解が成立している”と言えます。その上、テレビというパッシブな視聴状況のなかでのCMなのでその受容性は比較的高いと思われます。

 一方デジタル動画広告は、たとえばYouTubeの場合、視聴者はサムネを観て視聴するコンテンツを決めており、動画コンテンツそのものにアクティブです。できればCMは見たくありません。ただし無料で動画コンテンツが視聴できる以上、CMが入るのは仕方がないと理解しています。

 頭では理解しているものの、CMはある意味エイリアン広告です。ネイティブの反対ですからエイリアンです。テレビCMがネイティブとはいいませんが、デジタル動画はかなりエイリアン広告です。ターゲティングはされていますが、視聴者の思考は強く動画コンテンツに向いているので、CMは邪魔者です。CMが入ることは理解していますが、テレビCMの和解とは違います

 そのため「強制視聴でもなんでも送りつけてしまえばいい」と考えるのは少し違うかもしれません。視聴者の受容性を考えた上で1インプレッションの価値を想定することが肝要です。

テレビは“質”を追求すべし

 昔はテレビCMも立派なエンターテインメントであり、テレビコンテンツのひとつでした。(今はそうじゃないと言いたい訳ではありませんが)今でもCMのクオリティが高い1社提供番組では、番組からCMに移行しても画面注視率が落ちないという傾向もわかっています。

 そういう意味では、テレビ局はもっとネイティブCMを作ってみることをお奨めします。事前に番組の内容がわかっているのですから、番組明けに親和性の高いCMの案がつくれます。これこそAIクリエイティブの得意とするところでしょう。パッシブな視聴環境のテレビならではの施策です。基本視聴者も、同じCMを何度も観させられることに辟易としているのです。初物のCMに対する認知関心を調査してみるべきでしょう。

 フリークエンシー理論は、実は破綻しています。そもそも今のスポット投下では、どんなパターンで線引きしても、テレビ視聴者が多く視聴時間の長い高齢者に何回も当たり、視聴者人口が少なくかつ視聴時間の短い若年層にはほとんど当たりません。高齢層はCMパンチドランカー状態で、何度も当たっているのに認知しません。一方若年層は、一回でも一定の認知をすることがあります

 テレビ広告は手売り時代のバルク売りの感覚を脱して、1本1本の価値を吟味したり、してもらう仕組みを用意したりするべきです。実際にRTB(Real-Time Bidding:リアルタイム入札)とまで行かなくて構わないので、放送とストリーミングの垣根を越えてのバイイングができないと、この市場は急速にシュリンクするでしょう。

 テレビ局はプレミアムなコンテンツ(番組)にプレミアムなCM(しっかり考査したもの)を載せることに徹底することです。そこに素人動画やあやしいCMなどと一線を画すべきで、放送かストリーミングではありません。

 むしろ配信システム側の発想から放送枠を取り込むのです。筆者がGRPをインプ数にしたのもまさにそうです。デジタル文化側からテレビCM(放送×ストリーミング)をくくり直すことです。

 放送と書いて「送りっ放し」と読みます。それでよかった時代は終わったのです。

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GRPによるまとめ売りが「テレビCMの価値」を低下させている

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この記事の著者

横山 隆治(ヨコヤマ リュウジ)

横山隆治事務所 代表取締役
ベストインクラスプロデューサーズ 取締役 ファウンダー
トレンダーズ 社外取締役

1982年青山学院大学文学部英米文学科卒業。同年、旭通信社(現・アサツー ディ・ケイ/略称:ADK)に入社。インターネット広告がまだ体系化されていなかった1996年に、日本国内でメディアレップ事業を行う専門...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

楳田 良輝(ウメダ ヨシテル)

株式会社プログラマティカ 代表取締役社長

関西学院大学卒。広告会社で営業部門を経験後、経営及び人事部門でデジタル領域への投資・事業戦略や組織・制度変革等を担務する。メディア部門を担当後、デジタルエージェンシーを経てコンサルティング会社に経営参加。大手広告主に対するマーケティング・コンサルティング業務等に従事する...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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2024/08/26 15:23 https://markezine.jp/article/detail/45801

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