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テレビはどう生き残るか~鍵を握る「インプレッション取引」を成功させる仕組みとは~

テレビCMセールスに迫る変革の時。「GRP取引」から「インプレッション取引」へ

GRPによるまとめ売りが「テレビCMの価値」を低下させている

 では、テレビCM枠のCPMを現在より高くするためにはどうしたら良いでしょうか。逆に広告主は、どうすれば多少CPMが高くなったとしてもそれ以上にターゲット効率の良いテレビCM枠を買うことができるようになるでしょうか。

 テレビCMにはほとんどターゲティング機能がありません。一方デジタル広告は様々なターゲティング機能を有しています。しかも「その対象だけに配信する」が原則です。そこでCPMを比較してみると、かなりの差があります。テレビは平均350円~400円なのに対して、デジタル動画は3,000円~4,000円くらいでしょうか。この差は何故生まれているのでしょう。ターゲティングできるからでしょうか? デジタルシフトで需要が多いからでしょうか? それにしても合理的に説明できるようにも思いません。

 そもそもテレビスポットのGRP売りと、デジタルのインプレッション売りは発想が両極端で間がありません

 GRP売りとは「おいしいところだけは買わせないよ」と「面倒だからバルクで買いなよ」が基本で、持ちGRPも潤沢であることが前提でした。

 そのため、早朝や深夜などピープルメーターで計測できてはいるものの、実際はどうなのかなと思われる在庫も抱き合わせで買わせることに主眼が置かれ、結果本当に価値あるインプレッションも安売りしてきたのです。Aタイム単価などを設定してきたものの、タイムゾーンの価値を担保するだけで1本1本の価値を表現するにはほど遠い発想でした。

 その売り方で広告主とパーコスト契約をしてきた以上、今「上げてくれ」は通用しません。従来の大手広告主はほとんどパーコストで管理しています。メディアとして弱ってきているテレビの料金を上げることなど認めるはずもありません。

 ですから、テレビ局がこのGRP売りの発想の延長線上にインプレッション売りをするのは極めて危険です。

「インプレッション売り」の前に必要なこと

 では、インプレッション売りを成功させるためにはどうすればよいのでしょうか。テレビ局は、インプレッション売りをする前に、まず次の2つに取り組むべきです。

 ひとつめは、十把一絡げのGRP売りとデジタルのターゲティング配信の間に、新しいターゲティング枠という考え方を創造すること

 当然ですが、テレビでM1配信などできない訳です。ただ番組のコンテンツや時間帯では、M1とその周辺ターゲットに厚く視聴される枠を設定できる訳です。デジタルのようにゼロイチではない、グラデーションの濃い淡いではあるものの、この1本のインプレッションにはそういう価値があること、さらにパッシブな視聴環境でCMの受容性が高いことを主張できるかと思います。

 もうひとつが広告主の頭を変えることです。従来できるだけ安いパーコストで買うことが大量発注の広告主の思考ですから、彼らにデジタルに近いCPMで買わせることは、今は困難です。しかしよく考えれば、「効率的な枠だけを買うこと」は、従来よりも効果的なプランになります。また準ターゲティングCPMを理解して枠を厳選する買い方を受け入れる広告主とは、基本デジタルを主たる広告メディアとして考える広告主でしょう。デジタル主、テレビ従で考えると、ある意味テレビをミドルファネルで機能させる考え方が成立します。つまり、ファネルの下に行けば行くほど単価は高くても折り合います

 たとえばデジタルでターゲティング配信してターゲットに認知させて(あるいはSNSで認知していて)、テレビにも接触したターゲットに「あのブランド、テレビでもやっている」というパーセプションが購買に寄与することもある訳です。

 これは一例に過ぎませんが、テレビがサブメディアとなった時の使い方を求めている広告主がいます。もちろん大量に買ってくれるのではありません、ただしCPMを高く買ってくれるのです。

 そうしたクライアントにどう1インプレッションの価値を表現するか。ここから先はコンサル案件ではありますが、連載次回からは詳細に踏み込んでお話ししましょう。

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この記事の著者

横山 隆治(ヨコヤマ リュウジ)

横山隆治事務所 代表取締役
ベストインクラスプロデューサーズ 取締役 ファウンダー
トレンダーズ 社外取締役

1982年青山学院大学文学部英米文学科卒業。同年、旭通信社(現・アサツー ディ・ケイ/略称:ADK)に入社。インターネット広告がまだ体系化されていなかった1996年に、日本国内でメディアレップ事業を行う専門...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

楳田 良輝(ウメダ ヨシテル)

株式会社プログラマティカ 代表取締役社長

関西学院大学卒。広告会社で営業部門を経験後、経営及び人事部門でデジタル領域への投資・事業戦略や組織・制度変革等を担務する。メディア部門を担当後、デジタルエージェンシーを経てコンサルティング会社に経営参加。大手広告主に対するマーケティング・コンサルティング業務等に従事する...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2024/08/26 15:23 https://markezine.jp/article/detail/45801

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