SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

直近開催のイベントはこちら!

MarkeZine Day 2025 Retail

マーケティングの近未来

GoogleとMicrosoftの強みと弱み/Personal AIの未来を創るのは誰なのか?

AI時代のトレンドに乗り遅れるのは誰か?

 では、「the user」とは何なのか? Generative AIの次を見据えたときに重要になる。Personal AIの必須要件だろう。それは、Googleのアドネットワークが得意とした膨大な量の3rd party cookie/dataとは異なる。ユーザーとの直接的な関係が基礎になる。つまり、1st partyの関係性が必須ということだ。

 それは、「AIアシスタント」、あるいは「AIコンシェルジュ」と言ってもいい。折に触れて、シリコンバレーのエンジニアなどから耳にするコンセプトだ。シリコンバレーのエンジニアがいつか実現したいこと。そのひとつに、私の理解では、「Personal AI」「AIアシスタント」「AIコンシェルジュ」がある。

 日本人的にわかりやすいのは「ドラえもん」だ。のび太くんのことをなんでも理解していて、のび太くんのためになんでも尽くしてくれるAIロボット、それが「ドラえもん」だろう。ときに相談相手としてアドバイスをし、ピンチのときにはジャイアンから守ってくれる。遊び相手にもなるし、なんといっても、必要なときに役に立つ道具をポケットからなんでも出してくれる。ここには当然、1st partyの関係性がある。

 のび太くんを顧客に置き換えれば、顧客のことを理解して、必要なときに必要な助けをしてくれる、頼もしい役立つ存在。広告やマーケティングの観点からいえば、そんなブランドになれれば、とても理想的だろう。信頼され、役に立つブランド、ひとつの目指すべき姿だ。

 かなり前のことだが、自動車メーカー本社のマーケティング担当者と話していたときに、こんな悩みをきいたことがある。「自社のクルマに実際に誰が乗っているのか、じつは、本社では把握してないんです」と。

 つまり、系列の販売店、ディーラーに顧客データはあるけれども、そのデータは本社に共有してもらうことができない。たとえば、東京・三鷹にある販売店と東京・吉祥寺にある販売店は、商圏エリアが重なっているために同じ顧客を取り合うライバル関係にある。したがって、その大事なお客様のデータを本社であっても共有したがらないとのことだった。結果的に、その自動車メーカーのクルマに実際に乗っている人を本社ですら、すべて把握できていない、という状態に陥る。これは、統合的なCRMやCDPが構築できないという、日本のメーカーでよくある事例である。

 このCRMやCDPの重要性は、AIの時代に、ますます大きくなっていく。そして、このままでは、つまり、3rd party cookie/dataを軸とした広告配信やマーケティングに依存していたら、AI時代のトレンドに乗り遅れてしまう。なぜなら、「Personal AI」「AIアシスタント」「AIコンシェルジュ」の時代の幕が開け始めたからだ。

 たとえば、テスラは、一応、電気自動車メーカーだろう。ただ、そのクルマは、それ自体が端末になっている。自動運転者は、センサーによって位置情報を把握し、電波によってデータがサーバーとやりとりされている。顧客データだけではなく、リアルタイムに様々なデータをメーカーが取得できる可能性があるのは想像に難くないだろう。

 自動車という端末にもIDが付与されているだろうし、クルマのオーナー(顧客)のIDもきちんと把握されて、必要なときに必要なサービスを届ける準備ができているはずだ。1st party dataを保持したCRM・CDPが当然、きちんと整備されている。走る「ドラえもん」になる可能性がある。

次のページ
Googleと日本の自動車メーカーに共通する弱点

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • Pocket
  • note
マーケティングの近未来連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

ヴァイオレット・エヴァーインディゴ(ヴァイオレット・エヴァーインディゴ)

1990年代に米国西海岸に留学し、シリコンバレーで就職。1998年のGoogle誕生に衝撃を受け、ネット広告・デジタルマーケティング領域に職域を転換。2000年代初めに帰国。米国大手IT企業・プラットフォーマーを6社経験。デジタルマーケティングのコンサルティングを生業とする。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

MarkeZine(マーケジン)
2024/06/06 08:00 https://markezine.jp/article/detail/45886

Special Contents

PR

Job Board

PR

おすすめ

イベント

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング