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マーケティングの近未来

GoogleとMicrosoftの強みと弱み/Personal AIの未来を創るのは誰なのか?

既存の検索エンジンは過去の遺産になってしまうのか?

 ここで誤解を避けるために書いておくが、だからといって、Googleの検索連動型広告の優位性が揺らぐ訳ではない。検索エンジンのシェアで圧倒的な優位にあって、その検索エンジンにユーザーが自発的に検索ワード(自らの目的をGoogleに伝えているキーワードは重要な個人データである)を入力し、その個人データに基づいて検索連動型広告を表示するという仕組みは、GDPRの影響を直接的には受けない。そのため、Googleのビジネスモデルを破壊すると息巻いても、それは、せいぜい、アドネットワークの話に限られる。

 検索連動型広告はGoogleのコアビジネスだ。ここで問題なのは、検索エンジンを「過去の遺産」にしてしまうようなサービスの登場である。ChatGPTの登場が、Googleの「Code Red」(非常事態宣言)を誘発したのは有名な話だが、これは、既存の検索エンジン自体を過去のモノにしてしまう可能性が大きいからだ。つまり、GDPRの狙いとは別の話である。

 だが、Mustafa Suleymanがいうように、Generative AIの次は「Personal AI」であるなら、そこでは、1st party cookie/dataが必要になる。そして、「ドラえもんとのび太くん」のような1st partyの関係性が重要になる。端末のIDやクッキーIDでトラッキングする手法が破綻する可能性がある。「Code Red」発信は、Googleの屋台骨が瓦解するというリスク認識の発露だ。AIに質問すればなんでも回答が得られる世界。そこでは、検索エンジンが「過去の遺産」に貶められる。

 GoogleのGeminiは、仕方なく引きずり出された格好だ。AIでは世界をリードしてきたし、今も世界最高レベルの実力がある。一方で、リスクを避けるのは当然だ。検索エンジンとAI Chatには、トレードオフの関係がありイノベーションのジレンマがある。だが、OpenAIがChatGPTを出してきた以上、放置できない。でも、検索に代わる新たなビジネスを確立できるかどうか。しかも、1st party cookie/dataの領域は弱い。Gemini有料版がどこまで普及するかも分からない。リスクに自ら飛び込む必要はなかった。かといって、こうなった以上、逃げる訳にもいかない。

 OpenAIのSam Altmanは、それがわかっている。OpenAIにはトレードオフはないし、イノベーションのジレンマもない。失敗しても失うものは何もない。勇敢なチャレンジャーとして歴史に名を刻まれるだけだ。そこに、ITの巨人、Microsoftの後ろ盾がある。もちろん、成功すれば、英雄として歴史に名を刻まれる。

 Googleの強みは、圧倒的な検索エンジンのシェアだ。盤石なユーザーベースを礎にしてGeminiを普及させることができるか。そして、AI連動型広告の新しいビジネスを他社より先に確立できるかどうか。つまり、AIの領域で、1st party cookie/dataの質と量を強化できるかどうか。

 OpenAI/Microsoftは、Generative AIの開発と市場導入では優位に立った。歴史的に1st party cookie/dataでも優位にある。だが、必ずしも検索エンジンのシェアやその領域でGeminiと争う気はないはずだ。無駄な消耗戦だ。得意な領域、Microsoft365やAzure OpenAIの領域で「CoPilot」をPersonal AIとして育てていく戦略だろう。広告ビジネスはコアビジネスではない。そこでGoogleと争うことに意味もない。Generative AIからPersonal AIへの発展をリードすることに人類史的な意味がある。派生的に広告でもビジネス展開できるとよいぐらいだろう。

 GoogleとMicrosoftの強みと弱み。それらが交差しながら、AIのエボリューションが進行しているようだ。

 未来のことは誰にもわからない。未来を予測する唯一の方法は、自ら未来を創ることだ。AIの未来を切り開くのは誰なのか。面白い時代に突入したのは、間違いない。

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この記事の著者

ヴァイオレット・エヴァーインディゴ(ヴァイオレット・エヴァーインディゴ)

1990年代に米国西海岸に留学し、シリコンバレーで就職。1998年のGoogle誕生に衝撃を受け、ネット広告・デジタルマーケティング領域に職域を転換。2000年代初めに帰国。米国大手IT企業・プラットフォーマーを6社経験。デジタルマーケティングのコンサルティングを生業とする。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2024/06/06 08:00 https://markezine.jp/article/detail/45886

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