巨大資本力に裏打ちされた強さ
YouTube TVは、2018年に月額35ドルで都市圏から提供をスタート。放映チャンネル数を増やす交渉やプロスポーツの放映権を獲得しつつ、米国全土をカバーすることで企業のプレミアム広告も多く集まるようになった。初期に無料でユーザーを増やし、その後に有料化させる一般的なパターンとは「ま逆」で、最初から高額でスタートさせ、さらにその価値を値上げする成長法である。

YouTube TVが完備する機能の中には、日本のテレビ業界の突破口になるようなヒントがある。
有料サブスク化
認知率が100%近くになった時点で有料課金メニューを登場させる(日本のテレビ業界でも容易に想像がつく突破口)。
クラウド録画サービス
ダウンロード保存を可能にすることで、ストリーミング視聴の付加価値が高まる。
マルチビュー
複数のストリーミングを同時画面で視聴するニーズは、特にライブスポーツなどビッグイベント時は必須。
オリジナルのライブ放映
有名スポーツやライブなどの放映権を自社投資にて獲得し、「このチャンネルだけ」を増大。
ゲームとの共存
X-BoxやPlayStationなどのコンソール経由での画面視聴の提携にて、自然なストリーミングTV視聴を実現。
日本のストリーミングTV(TVerなど)では、上記の理想機能やサービスのどれもが「投資資金に左右され、回収モデルが描けない」となると想像できる。だから(わかっているけど)動き出せていない。
世界の上位コンテンツ関連企業の時価総額を見ると、AlphabetもAmazonも300兆円級の資産余力を持つ。そのさらに上位のAppleとMicrosoftは400兆円(3兆ドル)を超えた。この桁違いの巨大資本が、コンテンツだけでなく、AI(プラットフォーム)側からストリーミングTV事業に踏み込むと、従来の採算理論とはまったく異なる大きなインパクトが発生する。
一方で前出のDisneyやComcastなどは20〜30兆円規模で留まっており、ストリーミングTVというカテゴリーに閉じた計算では採算が取れない雰囲気が理解できるだろう。
「オンラインでTV+αを観られる」という機能価値による展開だけではなく、クラウドと投資資本力によるインフラ勝負が待ち構えている。そんな、ストリーミングTV事業のゲームルールが見えてきた。