※本記事は、2024年7月刊行の『MarkeZine』(雑誌)103号に掲載したものです
唯一成長中の「YouTube TV」
米国では、リニアTV放送(これまでのテレビ視聴方法)からストリーミングTV配信への視聴移行が顕著に進んでいる。2018〜2023年の5年間だけで旧来のリニアTV放送の契約(ケーブル・衛星・テレコム経由の有料視聴)は約3,000万件も減少し、5,500万台にまで落ちた。2014年のピーク時は約9,500万件だったので、リニアTV視聴世帯が半減している状況だ。
一方、ストリーミングTVの有料視聴は新規で約1,500万件に増加しており、おおむね旧来の「リニアTV視聴」が「ストリーミングTV視聴」に置き換わっていると言える。
ところが、ストリーミングTV事業を展開する大手テレビ局企業の多くが、黒字転換への出口が見えずもがいている様子だ。大手テレビ局各社のEBITDAを見ると、いずれの企業も1,000億円単位で本業収支に赤字負担を与えていることがわかる。
そんな中、本稿で注目するダークホースがAlphabet(Google)の「YouTube TV」だ。
日本未上陸のYouTube TVは、YouTubeやYouTube Premiumとは異なる月額74ドル(約1.1万円)の有料TVサービス。テレビチャンネル、有料映画コンテンツ、YouTubeコンテンツをまるっとYouTube TVで視聴することができる。
YouTube TVは、2024年2月には800万件以上のアカウント数を保有していると発表している。筆者論でサブスク事業の成否を問う分岐点を「まずは500万件」としているが、YouTube TVはその分岐点を軽々と突破しており、既に既存大手ケーブルTVプロバイダー(例:Comcast)に次ぐ規模だ。大手テレビ局の下落傾向から、2〜3年後にはTV最大手になる可能性すら予想できる。