PBに対するジェネリック的な見方を、どう変えていけるか?
――日本もPBが充実してきている印象がありましたが、諸外国とは状況が大きく異なるのですね。
喜多野:はい。この違いの捉え方は「よい/悪い」と単純に二分できるものではありませんが、デザイン面に関しては、日本のPBはまだ黎明期ないし成長期になると感じました。
ただ、PBは多くの場合、高い利益率を求められるところが強いという現実的な事情もあります。日本のPBが画一的なデザインに留まっているのは、できるだけコストを押さえなければならないという制約も関係しているでしょう。その上で、プラスアルファの創意工夫や意外性を持たせられているか否かが、PBデザインの重要なところであり、VERTEX AWARDSの審査でもこの点が重視されていたのではと推測します。
ちなみに、今回最多15の賞を獲得したのは、Daymon WorldwideというPB専門のエージェンシーでした。PBで高い利益率が求められるという状況は、日本でも海外でも同様だと思います。PBデザインに関するノウハウやスキルのほか、制作プロセスや環境の面でも諸外国に学べるところがあるかもしれません。
――ある意味、日本のPBにはまだ伸びしろが多く残っているということでしょうか。
喜多野:そうですね。リテーラー側の改善部分もありますし、消費者側のリテラシー・意識変化による伸びしろもあると思います。たとえば、「PBは安くて当たり前、安くなければならない」というように、何かを諦めたり妥協したりしてPBを選択する、という感覚・価値観を変えていくことで、日本のPBはまだまだ大きく成長できるだろうと考えます。
𠮷田:日本は、ナショナルブランドに対する信頼感が非常に強いですからね。同じレベルの品質であったとしても、PBはナショナルブランドの廉価版といった受け方をされてしまいます。
逆に、PBはパッケージにお金をかけないというリテール側の先入観もあると思います。作り手もパッケージデザインを楽しんで作り、消費者もそれを享受するといった雰囲気を醸成していくこともリテラシーの向上に繋がると考えます。
喜多野:日本のPBの伸びしろで言うと、インバウンドのニーズ拡大も追い風になるはずです。たとえば、日本のお菓子は海外でも非常に人気で、そのクオリティの高さに多くの方が気づき始めています。訪日外国人に対しても、PBは大きな成長のポテンシャルがありますし、ブランドの展開の仕方についてもまだまだ選択肢があります。この好機をつかむためには、デザインだけでなく、陳列や販促、プロモーションなども含めて訴求を考えていく必要があるでしょう。
