PB特化のアワード「VERTEX AWARDS」とは?
――「VERTEX AWARDS 2024」にて、西友「みなさまのお墨付き」のパッケージデザイン3作品がブロンズを受賞したというニュースがありました。はじめに「VERTEX AWARDS」とはどういったアワードなのか、ご紹介いただけますか。
𠮷田:VERTEX AWARDSは、プライベートブランド(以下、PB)のパッケージデザインに特化したグローバルなコンペティションです。マーケティング全体で見ると領域が狭いですが、アワード内では様々なカテゴリーが設けられています。
カテゴリーは大きく分けると2つ。1つはブランド全体を評価するカテゴリーで、もう1つは、食品・電化製品・日用品など商品ジャンルごと分かれているカテゴリーです。商品のカテゴリーもかなり細分化されており、冷凍食品、ペットグッズ、オーガニック系の商品といったカテゴリーも存在します。
ちなみに、今年は53の国・79のリテーラーから600以上のエントリーがあったようです。我々以外にも参加されている日本の企業がいたようですが、日本からのエントリーは多くなかったですね。
――アワードでは、どのような基準で評価・審査が行われるのでしょうか?
𠮷田:実は、評価基準について細かくは公開されていません。今回弊社から受賞した3作品も、具体的にどういう点が良かったかという寸評などは公開されていないんですよ。寸評などがあると、よりアワードからの学びも大きくなるのでしょうが。ただ、次の5つの要素に重きが置かれていることは公表されています。
1.Design:デザイン性
2.Information Architecture:(わかりやすい)情報設計
3.Originality:独自性
4.Structure:構成
5.X-factor:(上記4項目以外の)決定的な要素
日本と大きく異なる、グローバルのPB展開の潮流
――VERTEX AWARDSの授賞式に参加されて、グローバルのPBの潮流をどのように捉えられましたか? 日本と異なるところも大きかったでしょうか?
喜多野:海外のPBは、ナショナルブランド並みの市民権を得ています。売り場の50%以上をPBが占めているところもあるほどです。
一方、日本のPBは、まだナショナルブランドのジェネリック的な見方をされているのが現状ですよね。海外ではナショナルブランドより支持されていたり、価格帯も高かったりするので、そもそも日本とはリテール市場の環境がまったく違うと感じました。
こうした前提を踏まえて、日本のPBと海外のPBとでは、パッケージデザインにも大きな違いが見られました。日本のPBは、ブランドロゴ、商品画像、商品名など必要最低限の要素をパッケージに載せるような、均一的な見せ方をしているものが多い。一方、VERTEX AWARDS 2024で受賞した海外の作品を見ると、ブランドアイデンティティや、商品ストーリーを感じられる表現豊かなものが多いのです。日本のPBではあまり見られないクリスマスやイースターなどホリデー限定のデザインなどもあり、この点も日本とは異なると感じました。
――なるほど。たしかに、比べて見てみると、デザインの要素や色使いなどが全然違いますね。海外のPB商品は、選ぶ側の楽しさもありそうです。
喜多野:そうですよね。海外のPBは、グラフィックデザインやイラストが効果的に使われていて、店頭に並んでいる様子をイメージしても、買い物にワクワク感があります。そうした点も含めてカルチャーが全然違うなと感じました。
加えて、海外ではPBのラインが細かく分けられている点も目につきました。日本のPBは、レギュラー/プレミアム、あとはオーガニックのラインなど、せいぜい多くて3つくらいのラインしかありません。ですが、海外のPBは、環境を意識したエコライン、ローカルの原料を使用したライン、日本食用のラインなど、ブランド内のラインもカテゴリーも多い印象を受けました。