事例4:ウォーカー - It Feels Good to Share
最後の事例は菓子ブランドのウォーカーがイギリスで行ったクリスマスキャンペーン。動画では地元に帰省した男性・ラリーを中心とした物語が描かれています。パーティーで「最近どう?」と周りから声をかけられるたび、表面的な受け答えをしていくラリー。しかし、その本心は背後に浮かぶ絵文字で描かれており、彼のふるまいと本心とのギャップが窺えます。

数人と会話した後、友人に「本当のところはどうなの?」と尋ねられる場面でラリーはやっと心を開き、本音で会話を楽しむことができるようになります。“It feels Good to Share”(本当の気持ちを周りと話すことがメンタルヘルスにとって良いことです)というメッセージが込められた啓蒙的キャンペーンです。

メンタルヘルスの治療の場でも実践されているように、自己開示はストレス低減など心の健康を維持するために重要とされています。しかし、若年層であるZ世代の多くはメンタルヘルスの問題に関して、周囲に打ち明けづらいと感じていることが調査でわかっています。

ウォーカーの広告は、そうした若者世代のインサイトに響くクリエイティブになっていることでしょう。自分の内面的な部分まで理解してくれる存在は、とても貴重でかけがえのないものですね。
まとめ:「新たな感情」で関係を結べる接点
今回は四つの事例を紹介しました。メンタルヘルスをマーケティングやブランディングに活用するポイントは、大きく分けて以下の2点と捉えています。
1.新しいCSR領域
メンタルヘルスと聞くと、特定の産業や企業のみに関わるトピックと思われがちですが、多くの生活者は「どの企業にも当てはまるテーマ」と考えています。

特にプロシューマー層 (トレンドを生み出し、社会の消費行動に影響を与える生活者グループ)においては、その傾向が顕著です。この背景には、生活者はより企業に対する社会的責任を求めようになってきており、冒頭にも触れた広く認知され始めたメンタルヘルスという社会課題に対して、まさにどのブランドにも貢献を期待されているからだと考えられます。
2.生活者との新たな感情の接点
またもう一つのポイントとして、メンタルヘルスはCSR領域の中でも個々人が自分ごと化、感情移入しやすいテーマになっているために、ターゲットとする生活者とエンゲージメントを作りやすい題材となっていると思います。社会課題を問いかけるバーガーキングやハイネケン、ライフスタイルの変化を促すアシックス、若者の課題を捉えたウォーカー。個人的には、各社のキャンペーンで描かれている内容は、程度の差こそあれ「確かにこんな瞬間あるな」と共感してしまうものばかりでした。皆様はいかがでしたか?
まだ新しいテーマなだけに、「こんな活用の仕方があるのか!」という事例が今後も出てくることでしょう。今回ご紹介した内容が、皆さまの日々のマーケティングやブランディングに活かされ、新たなキャンペーンにつながれば幸いです。