事例1:フィリップス – Better Than New
最初に紹介するのは、フィリップスが2023年にドイツで行ったキャンペーンです。
家電製品における電子機器廃棄物は長年の問題とされてきました。その背景には、商品の返品があった場合に、検査・修理・検品し、再包装を経て再送するよりも、新たに商品を作り直した方がコストを抑えられる実情があるのです。その結果として多くの返却品はそのまま廃棄されています。
そこでフィリップスは“Better than New”(新品よりも良い)をスローガンに、キャンペーンを展開しました。毎年4月下旬に定められている“Earth Day”(地球の日)に合わせ、自社のEコマースサイトとハンブルグのPOP-UPストアにて再点検商品の販売を始めました。厳格な検査によりフィリップスの品質基準を満たした商品が、定価よりも安価かつ通常よりも手厚い保証が付けられた状態で購入者に提供されました。
また同日のベルリンのテレビ塔付近では、積み重なったプレゼントボックスのオブジェとともに二次元コードを展開。コードをスマホでスキャンすると、1年間で捨てられる再点検商品と同量の箱の山がARによって出現する、という仕組みです。とりわけ、電子機器廃棄物はクリスマスを代表とするギフト商戦期に多く排出されることから、プレゼントが山積みになったビジュアルがギミックとして使用されています。これにより、再点検商品の再利用の大切と、持続可能なコマースの必要性が効果的に啓蒙されました。
このキャンペーンでは52,000個の再点検商品がすべて完売となり、フィリップスは185トンもの電子機器廃棄物の発生を防ぐことに成功しました。2030年までに毎年30億人の人々の生活を向上させることをフィリップスは目標に掲げており、そのための新たなビジネスモデルとして、本キャンペーンは注目をされました。
事例2:ルノー – Car to Work
フランスでは労働人口の約30%が、「就職の機会があるにも関わらず、職場へのアクセスの難しさが理由で諦めざるを得ない」という経験をしています。特に公共交通機関が十分に提供されていない地域では、その割合が50%以上となっており、求職者と企業の両方にとって、多くの機会損失が発生しているそうです。
この問題を解決するために、自動車メーカーであるルノー・グループは、CareMakersというサービスを提供しています。
通常のリース販売との違いは、求職者が車を購入する際に、働き始めである試用期間中には支払いが発生せず、本採用となり雇用が安定したタイミングから支払いが始まることで、加入のハードルを大きく下げる工夫がなされています。また、より利用者の経済状況に合わせた支払いを可能にするため、金融機関とパートナーシップを組み、マイクロクレジット(低担保/小口資金)のオプションが用意されました。
さらにFrance Travail(日本でいうハローワークのような公共職業安定所)と協力関係を結び、求職活動プロセスの一部として組み込まれていることで、通常の自動車販売と一線を引いた、より公益性の高いサービスとして展開されています。
交通アクセスの問題に取り組む。まさに「モビリティによって人々の距離を縮める」というルノーのパーパスが体現されたキャンペーンとなっていますね。
