販売パートナーとの連携にあるブラックボックス
──そもそも、パートナービジネスには現状どのような課題があるのでしょうか?
先ほどメーカーと代理店の関係は非常に大切なものだとお話ししましたが、実はこの連携部分にはブラックボックスがたくさんあります。
第一に、自社の社員が動くわけではないので、いつどのタイミングでパートナー営業の方がお客様に提案しているのかがわかりません。メーカー側は売上を期待して予算をプランニングするのですが、パートナーの営業プロセスがブラックボックスになっているので見えないという問題が1つあります。
一方、代理店側の課題もあります。営業代理店は様々な商品を扱っているので、全製品の最新情報を把握しきれず、どれがどんな分野で優れているのか理解しきれていないため、お客様から「どれがいいのか提案してほしい」と言われても回答が難しいんです。メーカー側に提案書やスペック表を問い合わせたり探したりする手間もかかります。メーカー側にとっても代理店にとっても、こうしたコミュニケーションの時間のロスが非常に大きいのです。
こうした部分をデジタル化して、資料を検索しやすくしたり、コミュニケーションロスを防いだりすることで、お客様へのご提案やヒアリングなどの本業に時間を割くことができるようになるはずです。これらの課題を解決するのがPRMソリューションです。もちろんその前段階として、代理店の方とのリレーションシップを確立してパートナービジネスを推進するための基盤づくりを行う必要があります。
PRMはBtoBマーケティングの最重要課題
──パートナービジネスを推進するための基盤づくりはどのように進めていくのでしょうか?
まず考えるべき点は「パートナーに売っていただける環境をどう構築していくか」になります。そこで私どもが提唱しているのが「パートナービジネス立ち上げの5ステップ」です(図表2)。
ステップは1〜5までありますが、ステップ5まで一気に進めるわけではありません。まずは自分たちで直販し、売れる「型」を発見しなくてはなりません。その後にパートナーと契約します。
一般にパートナーと契約をすると、「売る人」と「売れない人」に分かれ、その1割の「売る人」が全体の9割くらいの売上をあげます。そのためメーカーは、まずその1割の中で誰が最も売っているのかをデータから発見し、売れる人のやり方を基に、パートナーに売っていただくためのメソッドやマニュアルを確立する必要があります。ここが最大のポイントで、目指すべき第一歩になります。
──お話をうかがうと、PRMはマーケティングよりもむしろセールス分野に近い感じがします。
ご指摘のように、PRMはセールス分野のテーマだと思われがちです。ですがパートナーというのは流通網の1つであり、米国ではマーケティング部門の管轄になります。具体的に言うと、マーケティングの中のアライアンスというカテゴリーに位置付けられていて、代理店はWebモールや展示会への出展と同じように流通網の1つと捉えられています。
日本の商流では、営業部門の下に代理店担当部署が置かれているため営業主体で動くケースが多いと思います。ただし、日本企業においても、PRMをマーケティングの最重要課題としてしっかり認識いただくことが大切です。
私としては、グローバルとの差はこの意識の差にあると考えています。マーケターの方が代理店を販売チャネルとして捉え、そこに対する戦略をしっかり考え始めたとき、いろいろな気付きを実感するのではないでしょうか。
