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MarkeZine Day 2025 Retail

グローバルの風向き、トレンドを知る。海外カンファレンスレポート

DX推進には従業員エンパワーメントが重要、エルメス・PPIHのケースから考える

顧客体験を支えるのは従業員体験、PPIHの考え方

 パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(以下、PPIH)のセッションでも「従業員」というテーマに触れた。

 PPIHが企業原理として掲げる「顧客最優先主義」を達成するために必要な要素として、「現場への大胆な権限委譲」「適材適所を見出す」を経営理念として提言している。顧客と最前線で触れ合う機会がある従業員(店舗スタッフ)が最も顧客を知り、顧客が求めるものを提供できる。だから「提供するモノ」「提供する方法」を現場に大胆に権限委譲するという考えだ。

 経営理念

 第一条 高い志とモラルに裏づけられた、無私で真正直な商売に徹する

 第二条 いつの時代も、ワクワク・ドキドキする、驚安商品がある買い場を構築する

 第三条 現場に大胆な権限委譲をはかり、常に適材適所を見直す

 第四条 変化対応と創造的破壊を是とし、安定志向と予定調和を排する

 第五条 果敢な挑戦の手を緩めず、かつ現実を直視した速やかな撤退を恐れない

 第六条 浮利を追わず、中核となる得意事業をとことん突き詰める

 引用:PPIH公式ホームページ

 PPIH代表取締役社長の吉田直樹氏は、素早くPDCAを回し、顧客満足を勝ち得て、店舗としての成果を収めるための仕組みと評価制度を用意することが経営層の役目であると語った。

 実際にPPIHでは、店舗スタッフに商品選定やその調達先、陳列方法や提供価格の判断を任せ、それらの結果が自身の評価や報酬、ポジションとして還元されるというのだから驚きだ。

 現場の判断を尊重し、組織のアジリティを向上させることは、一見簡単そうに映る。しかし、それらをバックヤードのオペレーションシステムや、人事制度等と結びつけ、会社全体のパフォーマンスに繋げていくことは非常に難易度が高く、多くの企業にとってモデルケースとなる事例と言えるだろう。

従業員を支える教育とコミュニティ、CRCの社内教育

 東南アジアのリテール業界のリード企業であるCentral Retail Corporation (以下、CRC)のセッションでは「従業員の力でどのようにトランスフォーメーションを起こすのか」というテーマで従業員教育にも触れた。

 同社は「Making CRC “A Great Place To Work”(CRCを最高の働く環境にすること)」をビジョンにセントラル・リテール・アカデミーという取り組みを行っている。これは全事業部と連携し、あらゆる職位や職能にあわせて多岐に渡る学習プログラムを提供するものだ。本プログラムは、同時にコミュニティとしても機能し、立場や物理的な距離を越えて、従業員間で感情的なつながりを持てるような仕組みを有している。

Central Retail linked in(https://www.linkedin.com/company/centralretail/posts/)
引用:Central Retail linked in(https://www.linkedin.com/company/centralretail/posts/)

 これによって従業員の自己実現と従業員同士で共創しやすい環境を整えている。従業員教育を通じてロイヤリティーや技能の向上を実現し、その結果として生み出される高品質な接客サービスを顧客に還元しているのだ。

ブランドの意志と従業員エンパワーメントが鍵

 日進月歩、目移りするようなテクノロジー群に囲まれ、企業は今何を優先して取り組むべきかと判断に迫られている。その際、最先端のものがよい、すべてをデジタル化するほうがよい、すべてを便利にするほうがよい、というようなテクノロジー傾倒型の思考をするのは間違いだ。

 まずはブランドの意志(DNA)と向き合うこと。その上で顧客体験において必要なものを検討すること(ときには不便を残した判断も行うこと)が重要だ。最後にそれらを支える従業員の体験に気を配ることを決して忘れてはならない。

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この記事の著者

岡本 静華(オカモト シズカ)

電通デジタル トランスフォーメーション部門トランスフォーメーション事業部 マネージャー
コマース会社の設立・経営後、2017年に電通デジタルに入社。顧客体験設計のプランニングを中心としたDXコンサルティング業務に従事。リアル店舗を保有する企業のDX戦略策定から、顧客視点・従業員視点に立脚した体験価値の構築まで幅広く実行。...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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2024/08/29 09:30 https://markezine.jp/article/detail/46507

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