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検索数、CVRともに大幅改善!ベネッセとサイバーエージェントのAI×広告活用

 AIのマーケティング活用でも特に期待されているのが、広告クリエイティブの制作だ。中でもサイバーエージェントは、AIがクリエイティブの成果を事前に予測し、それを確認しながら効果の高いクリエイティブを制作する「極(きわみ)AIお台場スタジオ」の運用を開始。すでにベネッセをはじめ、様々なクライアントで成果が出ているという。また12月にはベネッセのクリエイティブ制作における業務改革・体制構築をサイバーエージェントが支援する「AIクリエイティブセンター」の設立を発表。本記事では、極AIお台場スタジオをいち早く導入し成果を上げたベネッセの橋本氏、サイバーエージェントの毛利氏に、活用に至った背景や制作時に工夫したこと、そして両社の今後の取り組みなどを伺った。

「制作前に効果がわかる」広告制作の常識を覆す極AIお台場スタジオ

――サイバーエージェントでは、AIを活用した広告クリエイティブ制作に取り組んでおり、中でも「極AIお台場スタジオ」はその主軸となるサービスだと聞いています。どのようなサービスか教えてください。

毛利:極AIお台場スタジオは、インターネット広告のクリエイティブ制作に特化したスタジオで、効果の高い広告を作ることをコンセプトにしています。一番の特長は、過去の広告配信データを学習した「極予測AI」を駆使しながら制作を行っている点です。

極AIお台場スタジオ(教室の背景は実際にベネッセ事例で使ったもの)
極AIお台場スタジオ(教室の背景は実際にベネッセ事例で使ったもの)

毛利:極予測AIは、媒体やターゲティングを加味したうえで、弊社のクリエイターが考えたクリエイティブの要素に対する効果を予測できます。これまでは広告を配信しながらA/Bテストで効果を検証してクリエイティブを改善していましたが、極AIお台場スタジオでは、撮影と並行しながら極予測AIを活用することで、より効果が高いクリエイティブを検証しながらA/Bテストができるため、コストの削減や制作の効率化、効果の向上が実現できます。

 また、撮影から編集までワンフロアで行っているため、スピーディな制作が可能となっています。AIのサポートを受けながら、クリエイターがより広告効果の高いクリエイティブを確実に制作できるようになる。それがこの極AIお台場スタジオです。

――次にベネッセが極AIお台場スタジオでクリエイティブを制作しようと思った背景を教えてください。

橋本:これまでベネッセでは多くの広告を展開してきました。その中で常にあるのは、「良い広告とは何か?」という問いであり、その答えは「効果の出る広告」です。広告はアートではなく、ビジネスの目的を達成するために機能すべきなので、効果の高い広告を常に模索してきました。

 その中でも変化し続ける広告クリエイティブの制作方法に対応することは必須であり、ベネッセでは積極的に先端技術を取り入れてきました。

 その中で極AIお台場スタジオは、極予測AIによって過去の経験を武器にできることはもちろん、最新のハリウッド映画やドラマなどでも使用されているバーチャルプロダクションや最新技術を駆使したCG制作、XR撮影などにも対応しています。ここまで最新の技術を取り入れて広告制作に取り組むスタジオは世界を見ても珍しいため、「より効果の高い広告クリエイティブが作れるのでは?」という期待感から活用を決めました。

株式会社ベネッセホールディングス 専務執行役員 CDXO 兼 DIP本部長OX本部長/株式会社ベネッセコーポレーション 取締役副社長 橋本 英知氏
株式会社ベネッセホールディングス 専務執行役員 CDXO 兼 DIP本部長OX本部長
株式会社ベネッセコーポレーション 取締役副社長
橋本 英知氏

メディアとニーズに最適化したクリエイティブを制作

――今回極AIお台場スタジオをどのように活用したのか教えてください。

橋本:今回はYouTubeで配信する動画広告の制作に極AIお台場スタジオを活用しました。

 今「みんなで一つのメディア・コンテンツを見る」といった状況はほぼなく、YouTube一つをとっても人によって見ているコンテンツは大きく異なります。そのため、今回極AIお台場スタジオを使った広告制作では、できるだけターゲットのニーズに合った動画の作り分けを心掛けました。

 具体的には、YouTubeで設定できるターゲティングの中から、複数のパターンを用意し極予測AIに読み込ませ、ターゲットごとに最適な要素を抽出し、動画クリエイティブの制作を進めていきました。

毛利:AIを用いたクリエイティブ制作には大きく分けて3つの段階があると思っています。

 第1段階はメディアのトンマナに合わせたクリエイティブを作ること。たとえばテレビCMの場合は流せる尺が決まっており、TikTokであれば縦型の短尺動画であるべきなど、各メディアに対応したクリエイティブ制作が求められます。

 第2段階は今回ベネッセ様と極AIお台場スタジオで取り組んでいる、ユーザーニーズに合わせたクリエイティブの制作です。橋本様がお話ししたように、たとえばYouTubeではアニメを見たい人、YouTuberの動画を見たい人など、様々なユーザーがおり、ニーズが異なります。そのニーズに合わせたクリエイティブを用意するのが今回の取り組みのポイントです。

 そして第3段階はモーメント、つまりユーザーの瞬間的なニーズに合わせてクリエイティブを出し分けるという方法です。これは技術としてはまだこれからですが、生成AIの進化で今後可能になっていくと考えています。

ベネッセのデータも踏まえて制作し差別化

――今回のクリエイティブを制作する際にはどういった工夫をされたのでしょうか?

毛利:撮影前、企画の段階で各シーンの素材を極予測AIに分析させ、得られたスコアを参考にしながら撮影と編集を重ねていきました。

 たとえば、あるターゲットに対して、3つの撮影案があったとします。その際、パターンごとに企画を固めてから極予測AIを活用するのではなく、それぞれのカットの構想段階で、こまめに極予測AIを活用しました。そこで得られたスコアを参考に、各シーンの具体的なイメージを作っていきました。

株式会社サイバーエージェント AI事業本部 AIクリエイティブDiv 統括 毛利 真崇氏
株式会社サイバーエージェント AI事業本部 AIクリエイティブDiv 統括 毛利 真崇氏

橋本:極予測AIをより効率的に活用するために、ベネッセの持つデータも組み合わせた分析を行いました。過去の広告配信実績に弊社のデータをかけ合わせることで、ベネッセならではのクリエイティブを極予測AIのサポートを受けながら作ることができました。

 「AIでクリエイティブを作ると均質化してしまうのでは?」と考える方も多いと思いますが、自社の持つデータアセットや蓄積していたナレッジを組み合わせることで、独自性を出すことはできると考えています。

毛利:また極AIお台場スタジオならではのポイントとして、バーチャルプロダクションを駆使した撮影と編集があります。高精細なLEDを用いた巨大なLEDウォールとー照度が高いLEDソフトライトを活用することで多彩な色彩表現ができ、ロケをせずともあらゆるシチュエーションのリアルな背景を映し出すことが可能です。

 編集室も併設しているので、すぐにクリエイティブの編集もでき、撮影から編集までの工数とコストを削減できます。

検索数は160%増、CVRは115%増加

――今回の取り組みで得られた成果について教えてください。

橋本:今回配信した広告によって検索数が160%増加、資料請求のCVRは115%増加、さらに検索に至るまでの単価も120%低下しました。

 中でも、検索数が160%増加したのは高く評価しています。デジタル広告は獲得が中心で、潜在層への認知・理解を深めるのが難しいとされてきました。しかし、今回は配信ボリュームを出しながら効果的なクリエイティブを配信できたため、検索数の大幅増加につながりました。

 「リーチを獲得するならテレビCM」と言われることが多いですが、デジタル広告でもニーズに合わせたクリエイティブを複数用意しリーチを広げれば、テレビに引けを取らない有効なリーチを獲得できるのだと感じました。

 これまでのワークフローでは、無数にあるユーザーのニーズを捉えいくつものクリエイティブを作ることは、物理的に不可能でした。しかし、今回の取り組みは、その常識を覆す第一歩になったと考えます。

今後もAIを駆使してクリエイティブ制作をアップデート

――今回の取り組みを経て、気づいたことや学びになったことがあれば教えてください。

橋本:今回の方法が最高で、横展開すれば広告クリエイティブのパフォーマンスに関して万事解決するというわけではないと思っています。

 先ほど毛利さんからモーメントを踏まえたクリエイティブ制作の話が出てきましたが、同じ動画を見ていても視聴態度は人それぞれ違うはずです。またメディアのあり方も今後大きく変わっていくでしょう。

 成果を向上させるためにできることはまだまだあると思いますので、これからもクリエイティブ制作を進化させる技術を取り入れていきたいです。

毛利:ベネッセ様にいち早く導入いただけて、かつ効果が出たのが嬉しかったです。私たちはAIのサポートを通じてクリエイティブ制作のコストを下げ、パフォーマンスを高めていきたいという想いを持っています。その想いを形にするためにこの、極AIお台場スタジオは作られました。

 橋本様がおっしゃっていたように、僕らもこれが完成系だとは思っていません。ベネッセ様のように想いに共感してくださる企業様と一緒に、クリエイティブの作り方をアップデートしていきたいと思っています。

ベネッセ全社業務改革プロジェクト「AIクリエイティブセンター」を共に設立

――最後に今後の展望について教えてください。

橋本:今後も静止画、動画問わず、ベネッセが制作するあらゆるクリエイティブ制作にAIを活用していきたいです。

 個人的にクリエイティブへのAI活用は、写植からDTPへの変化に似ていると感じています。写植を仕事にしていた方はDTPを身につけることより仕事の可能性が広がっていった。またDTPが生まれたことで出版・印刷に関わる仕事ができるようになった方もいるでしょう。

 AIの登場も同様で、従来よりも仕事の可能性が広がるものであり、クリエイティブ制作をはじめあらゆる業務のハードルが下がっていきます。AIが浸透するにつれて、クリエイティブの作り方も変わっていくでしょう。

 今回をきっかけに、ベネッセとサイバーエージェントがクリエイティブのあり方のアップデートを目的に、新たな取り組みをスタートさせます。

毛利:ベネッセ様と進めているのが、ベネッセ全社業務改革プロジェクトである「AIクリエイティブセンター」の設立です。「極予測AI」など、当社がこれまでクリエイティブ制作プロセスの効率化や効果向上で精度をあげてきたAI技術を、ベネッセ様用にカスタマイズして提供し、クリエイティブ組織の立ち上げから一緒に取り組んでいます。

 この組織では、デジタル広告だけでなく、ベネッセ様が展開するダイレクトメールやLP、教材のDVDなどにもAIを駆使した制作フローを取り入れます。

 ベネッセ様が必要とする、ありとあらゆるクリエイティブ制作の体制そのものの改革に向け、これまで弊社が培ってきたAI技術を適用し、効果向上・制作効率化までご支援してまいります。

毛利:また極AIお台場スタジオでは、今後もっと色々な制作にAIを活用できるように機能を充実させていく予定です。効果の予測だけでなく、ナレーションテキストや効果音、BGMなどあらゆるクリエイティブを自動生成するマルチモーダルAIの実装もトライしたいです。

 様々なターゲット、瞬間に対応したクリエイティブを作り、コストを下げながら効果を高める。お客様にとって価値のある、クリエイティブに関する技術が詰まりきったスタジオとなることを目指して、極AIお台場スタジオのアップデートに取り組んでいきたいと思っています。

本件に関するお問い合わせ

株式会社サイバーエージェント インターネット広告事業本部 広報担当

mail:honbu_pub@cyberagent.co.jp

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この記事の著者

タカハシ コウキ(タカハシ コウキ)

1997年生まれ。2020年に駒沢大学経済学部を卒業。在学中よりインターンなどで記事制作を経験。卒業後、フリーライターとして、インタビューやレポート記事を執筆している。またカメラマンとしても活動中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

提供:株式会社サイバーエージェント

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2024/12/24 11:00 https://markezine.jp/article/detail/46676