事業成長の根幹にある中川政七商店のブランディング
「日本の工芸を元気にする!」をビジョンに掲げ、日本の工芸をベースとした生活雑貨の製造小売業を行う中川政七商店。2016年で、創業300周年を迎えた老舗だ。全国のメーカーと協業したオリジナル商品を中心に衣食住まで網羅し、約5,000種類の商品を取り扱い、直営店、自社ECに展開している。
2000年には3店舗の展開だったが、2024年には60を超える店舗数に拡大。生活雑貨事業の売上は4億円から80億円超へと成長している。この事業成長の根幹には、中川政七商店の考えるブランディングがある。
中川政七商店では、ブランドを「差別化され、かつ一定の方向性を持ったイメージにより、商品・サービス・会社にプラスをもたらすもの」と定義している。差別化とは、他とは違うこと。一定の方向性とは、“ブランドらしさ”や世界観、トンマナといったことだ。
ブランドを作るためには、すべてのタッチポイントをコントロールし、「あるべきイメージ」を作っていく必要がある。そのためには、人、もの、そして各メディアによる情報発信においても、同じトンマナ、一貫性を持ち、伝えたいことを齟齬なく伝えていくことが大事だ。
また、同社はブランドを作る上で「接心好感(せっしんこうかん)」という接客のあり方を重視している。「お客様の心に接し、心地よいブランド体験を提供することで、商品、お店、ブランド、会社を好きになってもらう」ということを意味する造語だ。
「私たちは、今商品を購入いただかなくても、お店やブランドを好きになっていただきたい。そのために、また来店したくなるような体験を提供したいと考えています」(中田氏)
“ない”から作った!理想のブランディングツール
しかし、店頭での接客と同等のコミュニケーションをデジタル上でも実践したい。リアルとデジタルを横断した「接心好感」をどう実現していくかが、中田氏へ課されたミッションだった。
「『ブランディングに力を入れたいが、良いツールがない』と社内で議論があり、戸惑いました。世の中には、データ分析や施策の効果測定に優れたCRM・MAツールが多く存在するじゃないかと」(中田氏)
まず、中田氏は顧客接点としてメルマガ登録とLINE会員登録を促し、CRMデータとして扱いながら販促施策を重ねてみた。そこでわかったのは、ROASが見合わないということだった。
「多品種少量生産の中川政七商店では、販促施策を最適化してもROASが見合わず、LTVにも大きく影響しませんでした。かといって、5,000商品分のシナリオを作成することも現実的ではありません。そこで改めて、もっと大枠でブランドがうまくいっているのか捉えることが重要だと、仕切り直すことにしました」(中田氏)
この課題を解決し、理想のブランディングを実現するため、同社はブランディングツールを開発することにした。それがブランドギャップソリューション「MONJU(モンジュ)」だ。