組織を動かす時に必要な「3つのドライバー」
戸松:具体的には、組織を動かすには私は次の3つのドライバーが重要になると考えます。
まずは、「他人事」を「自分事」に変えること。「自分には関係ない」と考え、他人事と捉える人が増えてしまうと、組織全体の機能が低下してしまう恐れがあります。たとえば、先ほどご紹介した、「個人ではなくチームのために」というマインドセットの変革などが、まさにこれに当たります。
2つ目のドライバーは、「分業と統合のバランスを取る」こと。組織は時間経過とともに機能の高度化と効率化を目的に分業が進みますが、それが行き過ぎるとサイロ化が進む傾向にあります。このような中で、いかにして横断的な連携を実現していくかが重要な課題となるわけです。
ただし、統合化とは必ずしもすべてをまとめることだけではありません。どの部分を統合し、どの部分で自律的に動いてもらうべきかを見極めることが重要だと思います。
最後に3つ目は、「属人化から仕組み化への移行」です。属人的な要素が過度に入ると、感情が絡むようになり、「私の顧客」「私の組織」「私の施策」といった考え方が生まれがちです。そうではなく、あくまでもルールに基づいた運営が重要です。スポーツと同様に、一定のルールを守った上で、その中で様々な工夫できる仕組みを整えることが大切でしょう。
MarkeZine:特に3つ目のドライバーに関しては、これにより多くのBtoBマーケティングの課題が解決されるように思います。
戸松:たとえば、先述した「統合マーケティングボード」についても、これ自体は常にみんなに歓迎されるものではないかもしれません。数字を追われたり、自らの営みを公開されたくないメンバーもいるはずですから。
ただ、オープンな場で議論することで、賞賛されたり、新たな視点を得たりすることもできます。このようにプラスとマイナスの要素をうまくコントロールするわけです。CXと同時に、EXを高める取り組みも非常に重要と言えます。
MarkeZine:戸松さんのもとには、様々なBtoBマーケティング関連の相談が寄せられていると思います。最後にMarkeZine読者にもひとことアドバイスをいただけますか。
戸松:最近私がよくお話しするのは、「定義をより広く捉えることを意識してみてはどうか」というアドバイスです。マーケティングに限らずですが、何事も定義が小さいと、思考のフレームワークが小さく制約されて、行うことや創出できる価値も小さくなってしまいます。わかりやすく言うと、定義が経営レベルではなく、担当者レベルであれば、それ以上広がることはないでしょう。
たとえば、私たちはBtoBマーケティングにおいて「お客様」の定義を大きく捉えています。単なる発注者・受注者の関係を越え、お客様と共に新しい価値を創造し、より大きな社会課題を解決していくことを目指しているのです。
加えて、我々マーケティングは、企画、開発、製造から販売に至るまでのすべての過程をつないで、お客様に価値を提供する活動だと捉えています。つまり、お客様に新しい価値を提供できるのであれば、手法は何でも良いのです。世の中には「how」に関するコンテンツが溢れていますが、それよりも「why」や「what」をしっかりと考え直すことが必要なのではないかと思います。