アリーナの存在がビジネスを左右する
リアルの充実として、全国各地に新アリーナの建設を進めている。ライブ会場のような一体感を作れるエンターテインメント性はアリーナスポーツの魅力の1つだ。迫力ある音響や照明演出、特殊効果演出などによる没入感や非日常感に、初めて見た人はみな驚くという。しかし、やはり老朽化した施設では限界がある。音響の心地よさなどがまったく違ってくる。
「W杯があった沖縄アリーナから始まり、群馬県太田市のOPEN HOUSE ARENA OTAや佐賀県にSAGAアリーナができ、2024年には千葉の船橋や長崎でも完成しました。今までの観戦体験とは次元を超える、NBAに近い観戦体験ができるようになっています」(増田氏)
アリーナ建設でバスケのエンタメ性が増し、事業が成功することで増収につながる。Bリーグの事業成長が加速すれば、たとえば観客が500人ほどだったローカルエリアの入場者数が5,000人規模に成長するのも夢ではない。するとチームにもスタッフにも投資でき、チームマネージメントやフロントマネジメントも充実する。
「その実現にはクラブ側がスポーツイベント自体を魅力あるものにするべく選手の磨き上げをしつつ、リーグが用意したインフラや仕組みをいかに活用できるかが鍵になる」と平地氏は指摘する。
世界に類をみない革新で持続的な事業成長を目指す
平地氏が指摘したクラブの動きを支えるものがB.革新だ。その取り組みの一つとして、Bリーグは開幕から10年目の2026年より競技成績による昇降格を廃止するという。代わりに事業の安定性という事業成績でリーグが振り分けられる。基本的に降格はせず、過度な選手投資を抑制し、事業投資を促進する狙いだ。
勝敗で昇降格が決まる現状では、負けないために選手に投資が集中する。だがそれでは、いくら稼いでもクラブのフロントスタッフには資金が回ってこない。クラブ経営やマーケティングなど屋台骨が安定しなければ成長を続けることは困難だ。さらに、いかに地域に貢献できるかも重要だ。
「事業に投資してビジネスを拡大し、地域に還元する。それがBリーグの存在価値です」(増田氏)
Bリーグの成長は話題化のためのテレビとの関係性作り、話題下のタイミングでアクセスするためのコンテンツ作り、オンラインとリアルでのインフラ準備といった、種まきが花開いた結果であり、さらに今後の成長を目指した改革が始まっている。
「これから新シーズが始まります。試合を楽しむ裏でこんなことが起きているのだなと、新たな興味を持ってご来場ください」と平地氏は締めくくり講演を終えた。スポーツはもちろん、様々な業界が参考になるセッションとなった。