連続的なデータを使うことで実現する効果的なPDCAサイクル
「うちれぴ」で取得したデータの特筆すべき点は、料理にまつわる一連の消費者の行動を把握できることにある。つまり、生活者の家庭ごとに、「何を購入したか」「どんな料理に興味を持っているか」「何を料理したか」「家族が料理にどのようにリアクションしたか」が把握できるのだ。
これは、メーカーがマーケティング戦略において効果的なPDCAサイクルを回すための助けになる。一連のデータから行うインサイト分析により、行動変容の仮説を立てることができ、これがPlanに役立つ。立てた仮説を検証するDoの段階でもサービス内のデータと接点が有効に働くだろう。Checkの段階では特定ユーザーに対するトラッキング分析を通じて、ロイヤルカスタマー育成のプロセスを解明。得られた示唆をActionにつなげていくことが可能だ。
インサイト分析による「行動変容の仮説」作り
保坂氏は「うちれぴ」のデータを活用した分析事例として二つを紹介した。
一つ目は「インサイト分析による行動変容の仮説作り」だ。「うちれぴ」が保有するレシピの閲覧・調理に関するデータ、そして商品の購買データという二つの主要なデータを活用することで、企業は自社製品の理想的な使用方法を実践しているユーザーを特定することが可能となる。そのようなユーザーの行動パターンを分析することで、他の顧客にも同様の行動を促すための仮説を立てられるのだ。
イメージしやすくするために、保坂氏は具体的な活用例を提示する。たとえば、あるユーザーが「サバ缶そぼろ丼」というレシピを閲覧していて、さば水煮缶を購入し、その後に実際に調理した場合、さば水煮缶を購入したきっかけは「サバ缶そぼろ丼」のレシピを見たことだと仮説を立てられる。またレシピ調理後、さらにさば水煮缶を購入していた場合はレシピがリピート購入のきっかけになったという仮説が立てられる。
仮説検証の手法としては、対象ユーザーに直接行うインタビューや、類似の行動を示すユーザー群へのアンケート調査の実施が挙げられる。もしくは「サバ缶そぼろ丼」をアプリ内で積極的に訴求展開し、レシピを閲覧した人が本当にサバ缶を購入したかを確かめる方法もあるだろう。
また、既に仮説を持っている場合にも「うちれぴ」は活用できる。たとえば、漬物をそのまま食べるだけでなく、アレンジレシピを紹介するほうが購買を促進できるといった仮説がある場合。この仮説に基づき、「うちれぴ」アプリ内で漬物アレンジレシピの特集を組み、このコンテンツを閲覧したユーザーの中で実際にレシピを試し、さらに漬物を購入した人々を特定する。これらの「行動変容者」に対してアンケートやインタビューを実施すれば、彼らの行動変容の理由を分析できるだろう。
分析結果から、たとえば特定のレシピがリピート購入を促すという新たな仮説が生まれた場合、そこからセールスプロモーションや統合キャンペーンを企画・実施することも可能だ。
そして、保坂氏が紹介するもう一つの分析事例が、「トラッキング分析によるロイヤルカスタマー化プロセス解明」だ。