単にGRPだけを増やしても購買は増えない!テレビCMの不都合な真実
話題はビールカテゴリーにおける購買の原理原則から、テレビCMと売上の相関に移る。認知獲得に効くとされるテレビCMだが、獲得した認知は売上や利益にどれほどつながっているのか。「この問いに対して根拠を示しつつ答えられない場合は、戦略ごっこ・マーケティングごっこの域に留まっている」と松田氏は指摘する。
データは時に、不都合な真実を浮かび上がらせる。松田氏が紹介する、某飲料メーカーがチューハイ他カテゴリーで新商品Aを発売した際の例は、テレビCMに出稿する多くのマーケターにとって不都合な真実と言えるかもしれない。
新商品Aは、新しいカテゴリーを創造するブランドとして立ち上がった。メーカーにはテレビCMを活用して、浸透率および新規購買者数を上げる狙いがあったそうだ。約1ヵ月で1,000GRP、金額にして約1.5億円を投資したものの、新規購買者数が増えることはなかったという。
松田氏は「広告反応関数」の観点でもテレビCMと購買者数の相関を検証。次の図がその結果を示したグラフだ。
「売上の大きいメジャーブランドという前提条件はありますが、テレビCMの月間GRPが3,000の場合と5,000の場合では、月間購買者数に大きな開きが生じます。一方、点線で囲った範囲(グラフの左下)を見ると、月間GRPに月間購買者数が比例していません。このような関数を理解できていなければ、テレビCMの投下量を決める根拠に欠けてしまうのです」(松田氏)
「テレビCMは新規購買者数の増加につながらない場合がある」という不都合な真実がデータを以て示されたわけだが、松田氏曰く「テレビCMにあるものをミックスすると、新規購買者数を劇的に増やすことができる」とのこと。それがリテールメディアだ。
「テレビCM単体でコミュニケーションを展開した結果と、テレビCM+リテールメディアを組み合わせた結果を比較すると、メディアミックスした場合の月間新規購買者数が1.7倍も多かったのです。GRP、コスト、獲得効率、10万人獲得までに要した期間はメディアミックスのほうが大幅に低く少なく、コスパとタイパの高さが見てとれます」(松田氏)
テレビCM×リテールメディアは獲得顧客の“質”も担保
テレビCMの効果を最大化するリテールメディアとは、具体的にどのようなものなのか。松田氏によると、リテールメディアは次の図に示された三つのタッチポイントを含んでいる。
YouTubeやLINEのほか、小売企業のECサイトおよび店頭のサイネージといったチャネルに対し、小売企業が保有する1st Partyデータ(ID-POSデータのような実購買データ)を用いながら、広告を配信する仕組みだ。
「リテールメディア最大の強みは、小売企業が保有する1st Partyデータを活用できる点にあります。これを最大限活用すると、ユーザーの実態を細やかに認識できる上、LTVが高い傾向にあると実証されているユーザーに、狙いを定めてリーチおよび獲得することができるためです。広告効果も実売ベースで検証できます」(松田氏)
テレビCMとリテールメディアの組み合わせで効率良く新規購買者を獲得できることはわかったが、果たして獲得した購買者の“質”はどうか。松田氏はその疑問に答えるべく、先ほど「テレビCMの不都合な真実」で例に挙がったチューハイ他カテゴリーの新商品Aを再び例示する。
テレビCMだけでは新規購買者数が伸びなかった新商品Aだったが、カタリナマーケティングジャパンが運営する各種リテールメディアを介することで、新規購買者数が増えた。さらにリテールメディア経由で獲得した新規購買者のうち、67%をLTVの高い顧客が占める結果となったそうだ。まさに量と質のいずれも叶える理想形と言える。
「マーケターの皆様は、獲得したい顧客、つまり戦略ターゲットを定義しているはずです。新商品Aの場合は『直近1年間でチューハイやビールを数多く飲んでいるが、新商品Aを焼く3ヵ月間購買していない人』が戦略ターゲットでした。テレビCMとリテールメディアを組み合わせる以前は、この定義に当てはまる新規購買者が43%しかいなかったため、67%は非常に価値のある数値と言えます」(松田氏)