日本のマーケターがセンスを活かせる業務と今後注力すべき業務
━━AIを学ぶ力はとても重要なんですね。
現在、AIと「リバースエンジニアリング」という概念を組み合わせることで、様々な問題が早期に解決できるようになると考えられています。この概念は簡単に言うと、「何らかの結果から逆算することで、より良いソリューションを考えていくという手法」(編注:元来は工業において使われてきた言葉であり、既存製品を分解・解析することでその構造設計を明らかにする手法のこと)。AIによって結果とその逆算を繰り返すことで、様々な問題が今までよりとても早く解決できるようになっていくんです。

このようにAIは今後あらゆる分野で推進剤になりうるわけですが、だからこそ日々進化するAIの能力やその活用スキルを自身がどうキャッチアップしていくか、身につけていくかも重要ではないでしょうか。
━━日本市場のマーケターに見られる傾向や助言があれば教えてください。
実は、日本のマーケターの皆さんは世界のマーケターと比べても非常に優位な点を持っていると個人的に思っています。それはビジュアルへのセンスです。特に静止画のデザインは世界の他のマーケティングコミュニティよりも非常に優れたセンスを持っていると感じます。今後はAIがそうしたクリエイティビティをさらに加速していくことが予想されるため、ぜひこの機会を活かし、日本の強みを伸ばしていかれると良いでしょう。
今後ぜひ取り入れてほしいことが一つあります。AIは論理的な思考のプロセスをより良く改善していくため、マーケターの皆さんはこれまでよりも感情的な側面にフォーカスをしてマーケティング活動をするべきだと思っているんです。たとえば、ブランドのメッセージやストーリーを作ることですね。日本のマーケターの皆さんもAIとの分業を推進し、顧客と感情でつながるための活動へと注力できるようになっていただければと考えています。
効率化だけでなくアウトプットの質を高めるためのパートナーへ
━━最後に今後の展望として、御社が目指す在り方やその実現のために取り組みたいと考えているアクションを教えてください。
まだ道半ばですが、HubSpotとしてはこれからもマーケターの皆さんの仕事を良くしていくためのプロダクトをお届けしたいと考えています。

INBOUND 2024では、これまで以上に良いクリエイティブ、メッセージングを作成できるようにする、あるいは顧客をより深く理解できるようにする、プロダクトやアップデートを数多く発表しました。たとえば、顧客の情報をこれまでより深く理解するための「Breeze Intelligence」や、様々なAIエージェントを発見するための「agent.ai」などは、マーケティングの特定のポイントを急速に良くしていくソリューションとしてわかりやすいものだと思っています。
私としてはこれらのプロダクトによって、単純な作業効率化、時間短縮を目指しているわけではありません。アウトプットの質が高まっていくようなソリューションをHubSpotとして提供していきたいと考えています。