脱リード至上主義!トヨクモ流マーケティング
最初に両社の簡単な会社紹介が行われた。
ウイングアーク1stはBtoB製品を多く手がけており、データ活用ソリューションで高い国内シェア(※)を誇っている。最近では「データ活用は、ウイングアーク」のコピーでテレビCMを展開するなど、プロモーションを強化している。
※富士キメラ総研「ソフトウェアビジネス新市場 2024年版」BIツール・2023年度実績をもとに、ウイングアーク1stが独自に推計。ユーザー自身が有用性および生産性向上のために社内外のデータを集計・分析できるBIツールをオペレーショナルBIツールと定義し、当該企業群のパッケージおよびSaaSの販売金額の合計から当社オペレーショナルBIツール市場における市場シェアを独自に算出。
一方、トヨクモは災害時の安否確認サービスやkintone連携サービスなどを提供しながら独自目線でマーケティングを展開し、成長を続けてきた企業だ。
両社はコンテンツマーケティングに力を入れており、それぞれ異なるアプローチで成果を上げている。
トヨクモは「プロダクトがプロダクトを売り込む」PLG(Product-Led Growth)の戦略を採用。売り込まないセールススタンスのため、インサイドセールスが存在せず、フィールドセールスも行わない。いわゆるTHE MODEL型のマーケティングをしていないという。
また、リードの取得タイミングは無料トライアル時に設定しており、多くのBtoB企業が資料ダウンロードなどでリードを獲得しているのに対し、トヨクモでは資料ダウンロードもフォーム入力なしで行える。

トライアル申し込み数増加につなげた、コンテンツマーケティング4つの鉄則
このトヨクモの脱・リード獲得を掲げたマーケティング活動を支えているのがコンテンツだ。中井氏によると、同社では「No form, No spam, No cold call」「コンテンツのスタバ化」「データドリブン」「顧客起点」の4つを重要キーワードに挙げているという。

顧客起点で必要なコンテンツを多数用意し、いつでも質の高い商品・サービスを提供するスターバックス コーヒーのように、有益なコンテンツに触れることができる環境を整える。そして、その裏ではGoogleアナリティクスやTRENDEMONなどの解析ツールを用いてWebサイト行動を把握し、データドリブンな改善を実施。これらの取り組みを通じて、No form, No spam, No cold callなマーケティングを実現しているのだ。
この戦略により、チャーンレートは0.67%と低水準を維持。ブログPV数は2024年7月に前年同月比469%、ブログ経由のトライアル申し込み数は145%増と、顕著な成果を上げている。顧客起点の売り込まないセールス、ターゲットが自由に選べるコンテンツの視聴形態などで信頼関係を築けた結果と言えるだろう。
トリガーとなる指標はチャーンレートであり、トヨクモではトライアルが入った際、一定の割合で契約が入るという想定契約数がある。しかし、数字だけに囚われてしまうとマーケターが無理をしかねない。成約数はコントロールできないため、その手前にあるWebサイトへの流入やリード数を何とか増やそうとする。しかし、顧客起点でない数字の積み増しは、最終的な効果につながらないのだ。