SUBARUの成長のカギは「安全性」
セッションで最初の主題となったのは「SUBARUのマーケティング戦略」についてだ。安室氏はSUBARUのマーケティング戦略を進める指針となっているSUBARUの積極化・新規化の要因について分析した結果を共有。その結果を見ると、消費者は安全技術に優れている点や安全性能が高い評価を受けていることを知ると、SUBARUに対して積極的な情報収集をしたり、新規顧客としてディーラーに訪れたりすることがわかったという。
![株式会社SUBARU 国内営業本部 マーケティング推進部宣伝課 課長 安室 敦史氏](https://mz-cdn.shoeisha.jp/static/images/article/47093/47093_1.jpg)
しかし「SUBARU=安全とは思われていなかった」と安室氏は語る。
「SUBARUの車を買いたい、興味があると思っている方は安全性を認知・実感している一方で、SUBARUのことを知らない方は『男性の趣味車』『レースが好きな人の車』『危ない車』などの認識を持っています。このパーセプションのギャップを埋めていくところに力を入れています」(安室氏)
SUBARUでは、安全性を訴求するために、安全性を重視したクリエイティブを制作。たとえば「インプレッサ『いのちを守る篇』」では、母親の日常的な運転シーンの中で起こりうるリスクに対し、アイサイトが事故を防ぐ様子を伝えながら、アイサイト搭載車が追突事故発生率0.06%であることを伝えた。
これにより、全業界の指名検索スコアが高かったクリエイティブ3位にランクイン(ノバセル調べ)し、サイト流入単価も大きく改善。新たなクリエイティブが「SUBARU=安全性が高い」というパーセプションの変化につなげるきっかけを作った。
一方で「スポーティな車が欲しい」「運転が好き」など、自動車に興味を持つきっかけは様々なので、安全性以外の訴求はデジタルマーケティングを中心に、各車種のバリュープロポジションを網羅して配信しているという。
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6年ぶりの販売台数前年越えを支えた、データ活用と統合
この「SUBARU=安全性が高い」を重視した戦略に切り替えた結果、営業の努力と相まって2023年の販売台数が6年ぶりに前年を超えたSUBARU。安室氏は、この結果を支えていたデータ統合と効果計測について解説した。
SUBARUでは、2016年からCDPの導入を始めてデータ活用と統合をスタートし、各種広告の配信結果からメーカー/ディーラーWebサイトでの行動データ、ディーラーの行動ログ、オーナー専用アプリ「マイスバル」のデータなど、あらゆる接点のデータを蓄積し、One IDで統合。そして、これらのデータを基に様々な広告・マーケティング施策を展開している。
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安室氏は、このデータ活用と統合の仕組みが整ったことにより「様々な施策から得られたコンバージョン(来店予約や試乗予約など)だけでなく、それが受注につながったかどうかまで一筆書きで追えるようになった」と語った。そして、自動車の検討行動の変化を例に、データ活用・統合の重要性を伝えた。
「昔は自動車を検討する際3~4回ディーラーを訪れるのが当たり前でしたが、今は多くの方が購買直前まで来店しません。私は見えないトーナメント戦と呼んでいますが、Web上で検討する方のデータを見ながら施策を展開し、来店を検討する選択肢の中に入ることを目指しています」(安室氏)