Z世代は「ブランド名」を覚えていない?
まずは、特定の状況でブランドがどのように思い出されるのかを確認します。日頃から製品のブランドを意識したり、あるいはお気に入りのブランドがある場合は、その名前が比較的容易に思い浮かぶはずです。
今回使用する調査データは、各世代の人々が揃って回答できるよう「一日の勉強や仕事を頑張った後の自分への『ご褒美』」をシチュエーションとして採用しています。それに対し、“思い浮かぶブランド”を自由に回答してもらい、その傾向に世代間で違いがあるか比較していきます。
以下の図は、得られた回答を集計し、世代別にまとめたものです。

まず全体の傾向を見てみると、女性はケーキ・チョコレート・アイスなどのお菓子やデザートが、男性はビール類やそのメーカーがそれぞれ挙がりやすいようです。続いて各世代別に結果を見ていくと、X世代や58歳以上の世代では企業や製品のブランド名が思い出されているのに対し、Z世代は具体的なブランド名が挙がりづらいことがわかります。
長い年月をかけ多くのブランドの製品を試してきた経験豊富な世代の方が、商品の使用経験が相対的に少ない若い世代よりも、ブランド名が思い浮かびやすいのはある種当然かもしれません。ただ、これからの消費を担う世代が、少なくとも現段階においては、あまり多くのブランドを思い出さない可能性が示されています。
「記憶されるブランド」と「買いたいブランド」はイコールなのか
先ほどの結果のみでは、新たな世代の人々はブランドに対する意識が低く、こだわりが弱いと言い切るには、十分な根拠とは言えません。本項の本題に入る前に、先ほどの結果に対する追加調査と分析を行います。
追加調査では、ある特定のカテゴリを提示した際に思い浮かぶブランドを回答してもらい、その平均回答件数を世代ごとに比較していきます。カテゴリは、性別と年代を問わず使用している人の割合が高い「ヘアケア製品」を採用し、ブランド名を自由記述形式で5件まで聴取します。
結果は以下の図の通り、Z世代やミレニアル世代よりもX世代や58歳以上の世代の方が、思い浮かぶブランドの平均件数が多い結果となりました。

思い浮かぶブランドの世代間の差異を改めて確認したところで、続けて本項の本題である、思い浮かぶブランドと購入の検討の関係を検証していきます。ここでは、思い浮かんだブランドについて、それが購入したいブランドに含まれるかを聴取します。もしもブランドに対するこだわりが少ないのであれば、思い浮かんだブランドだからといって、購入したいと思う割合は必ずしも大きくないはずです。
結果は以下の図の通りです。真っ先に思い浮かぶブランド、すなわち、第1想起ブランドが購入意向の対象となる割合については、Z世代やミレニアル世代とX世代や58歳以上でほとんど差がありませんでした。新たな世代においても、初めに思い浮かんだブランドの商品を買いたいと思う傾向に違いはないようです。他方で、2番目以降に思い浮かぶブランドを見てみると、Z世代やミレニアル世代よりも、X世代や58歳以上の方がおおむね高い傾向となっています。

以上から、新たな世代の人々も、ブランドへの意識やこだわりを持たないわけではない可能性が示されました。他方で、2番手以降のブランドについては世代間の差が見受けられます。
これまでの結果を総合すると、これからの消費の担い手である新たな世代の人々には、「思い浮かぶブランドの数は少ないが、初めに思い浮かんだブランドの商品を買いたい」という特徴が見えてきました。