ユニリーバ時代に舐めた辛酸
木村:社会的意義の追求と言えば、僕自身がユニリーバ時代に辛酸を舐めた経験がありました。2016~2017年当時、日本では「ナチュラル」や「オーガニック」のカテゴリーが発展しないと言われていたんです。ヘアケアにはツヤを出す効果が求められ、サイエンスドリブンな商品こそ正義でした。

木村:ただ、グローバルのメンバーからは「何を言っているんだ」と一蹴されました。「ヨーロッパでもアメリカでもナチュラルやオーガニックの波が到来しているのに、なぜ日本にだけは来ないと言えるのか」と。当時はリサーチをしても、ブームの兆しは見えなかったんです。
それが今や日本でも、ナチュラル/オーガニックが一つのカテゴリーとして受容されています。若年層を中心に、購買行動でサステナビリティを重視する風潮も生まれているようです。このように、風向きが変わってカテゴリーが一気に広がることは大いにあります。今は利益が出にくくても、世の中のためになる事業に先行投資していれば、あるタイミングでトレンドが生じてビジネスが広がるかもしれません。そのために準備をすることも大事だなと感じます。
田岡:僕の古巣のネスカフェでも、最近はメインの訴求をサステナビリティにシフトしています。コーヒーは、最初に飲んだ銘柄を飲み続ける人が多いカテゴリーです。このシフトチェンジはチャレンジングに見えて、真のLTVを考えると有意義な投資だと思います。
木村:トレンドは消費者から生まれるものというより、ネスカフェのようなキープレイヤーが生み出すものなのかもしれませんね。「トレンド予測」という表現を耳にしますが、トレンドをつくる気概がブランドには求められているような気がします。
後編へ続く
