SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

直近開催のイベントはこちら!

MarkeZine Day 2025 Retail

グローバルの風向き、トレンドを知る。海外カンファレンスレポート

進むテクノロジーの民主化——イオン、ドミノ・ピザに学ぶ技術活用と向き合い方

技術の民主化のもと改めて重要視される顧客体験

 リテールエコシステムの活性化にともない、企業が選べる技術の選択肢は広がっている。だからこそ、必ずしも常に最先端のテクノロジーばかりを有望視するのではなく、自社の掲げる理想や提供価値を実現する手段として最適なテクノロジーを選択することが重要だ。

 ドミノ・ピザのクリストファー・トーマス・ムーアCDOによる基調講演では「テクノロジー主導のイノベーションを通じて消費者のニーズに応える」と題して、まさに理想の顧客体験の実現のための技術活用について語られた。

 トーマス・ムーア氏は同社がいかにして継続的なデジタル・イノベーションを次々と起こしてきたかを示し、中でも大きなゲームチェンジャーとなったのは、2008年のピザ調理から配達までの過程をトラックダウンするデジタルプラットフォームの導入だったと振り返る。

写真右:ドミノ・ピザのクリストファー・トーマス・ムーアCDO(NRF提供)
写真右:ドミノ・ピザのクリストファー・トーマス・ムーアCDO(NRF提供)

 「それまでは、顧客は電話でピザを注文したらあとはひたすら待つだけだった。ピザは今どこにあるのか?いつ届くのか?まるでわからない。デジタルプラットフォームにより我々はこのブラックボックスをオープンにしたのだ。ピザがどこで作られて、どのように運ばれているかを見えるようにし、そしてピザの到着時間を顧客に伝えることができるようになった。これは、顧客の思いに寄り添うサービスの実現でもあった」

 以来、ドミノ・ピザは、AIを使った販売促進キャンペーンから、生活者インサイトの取得など、様々な場面でデジタルを活用することで変革を続けてきた。

 注文&デリバリーにおいては、2023年にグーグルと提携しGoogle Maps APIを活かして、路上や公園のベンチなど顧客のいる場所にピンポイントで配達できるサービスをスタートした。同年には、ドライブスルーの長い列に並ぶことなく、運転中の車から注文して一番行きやすいドミノ・ピザ店舗までドライブし商品をピックアップできるiPhoneユーザーのためのサービス「Apple CarPlay」も開始した。

 トーマス・ムーア氏はこうしたデジタル・イノベーションやサービスを前進させるためには、生活者が持つ願いや悩みや不満の本質を理解することが不可欠だという。

インサイトを捉えた施策でアクティブユーザー300万人増

 「エマージェンシー・ピザ(ピザ1枚無料)」というキャンペーンは、ピザとは関係のない生活者の日常のペインポイントから生まれた。ピザを1枚注文するともう1枚無料でついてくるといったキャンペーンは日本においてもよく見かけるが、エマージェンシー・ピザは日常生活で起こる小さなアクシデントやハプニングが発生し、注文者が緊急事態と判断した際に慰めとして、期間中1回に限りミディアムサイズ・トッピング2種のピザ1枚を無料で提供するというもの。

 たとえば「料理を黒焦げにしてしまった」「釣った魚をうっかり逃がしてしまった」「停電した」「大渋滞でデートの約束に行けなかった」などだ。

 本キャンペーンは米国のロイヤリティプログラム会員向けの施策で、ユーザーが会員アカウントにサインインし、8ドル以上の注文をすると、自動的にエマージェンシー・ピザのクーポン1枚が発行される仕組みで、2023年10月から2024年2月まで行われた。

Instagram @dominosのhttps://www.instagram.com/p/CyLj2qfOU0B/投稿より
Instagram(@dominos)の投稿より

 人々を癒す存在になることがドミノ・ピザの目的だと示したこのキャンペーンは好評で、ロイヤリティプログラムのアクティブメンバーが300万人(10%)増加し、同社の2024年第1四半期の売上の向上にも大きく貢献したとされる。トーマス・ムーア氏はこれらの実績とともに「インサイトを深くとらえ、ペインポイントを解消するとき、経済効果も最大限増幅する」と締めくくった。

次のページ
コアバリューを確立し、起こすエクスペリエンス・イノベーション

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • Pocket
  • note
関連リンク
グローバルの風向き、トレンドを知る。海外カンファレンスレポート連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

岡本 静華(オカモト シズカ)

電通デジタル トランスフォーメーション部門トランスフォーメーション事業部 マネージャー
コマース会社の設立・経営後、2017年に電通デジタルに入社。顧客体験設計のプランニングを中心としたDXコンサルティング業務に従事。リアル店舗を保有する企業のDX戦略策定から、顧客視点・従業員視点に立脚した体験価値の構築まで幅広く実行。...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

MarkeZine(マーケジン)
2024/11/20 09:30 https://markezine.jp/article/detail/47277

Special Contents

PR

Job Board

PR

おすすめ

イベント

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング