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成果につながるリサーチ

「それ意味ないですよ」も伝える。アサヒビールの消費者インサイト室長に聞く、リサーチ活用の極意

開発初期からともに動くケースが増加 関与のバランスを試行錯誤

━━自由研究、ですか?

 もう少し具体的に言うと、各カテゴリーの開発などを起点とせずに、私たち自身が「お客様はこうではないか」という仮説を持ってテスト的な調査を行ったり、これまでの調査を統合して新しいインサイトを導き出したり、様々な観点で検証しながら出てきた成果をマーケターの方が実務に応用できるようにしていこう、というものです。他の二つの役割に比べて業務の優先順位はやや下がるのですが、過去の蓄積を使えるものにし、今後の可能性を広げられる点はやりがいを感じますね。

画像を説明するテキストなくても可

 ちなみに消費者インサイト室の業務規程は、まさに今話した1から3の順番なんです。マーケティングリサーチ室というと、第2に挙げたマーケティングリサーチ業務がトップに来ると思いますが、消費者インサイト室は「マーケティング全体の指揮推進」という領域にやや比重がかかっていることが特徴です。

━━なるほど。ということは、各ブランドがマーケティングを推進していくうえで必ず消費者インサイト室が関与しているのでしょうか?

 正直を言うと、その点は試行錯誤中です。なぜなら、すべての開発で必ずリサーチを経由するとなるとやはり時間がかかってしまいますし、場合によっては必要でないこともあり、バランスをどう取るかが難しいからです。ただ、決裁者や担当者が大きな意思決定や判断を下さないといけないシーンは多数あります。その時に依頼があれば意見を述べる役割を担う必要があると考えています。

 実際のところ、突然「リサーチが必要だ」と言われても、こちらも何が課題なのか把握しきれません。そのため、どちらかといえば開発を始めるフェーズから関わるケースが最近増えていますね

目の前にいる人を信じる。「N=1」起点で曖昧なままにしない

━━消費者インサイト室の業務について実例を伺いたいのですが、いかがでしょうか?

 個別の商品というよりは全体に関わっていることが多いのでお答えするのがなかなか難しいのですが、消費者インサイト室が誕生したことによる変化の1つとして、「マーケティング本部全体が『真ん中はお客様』という考えを実践できるようになってきている」ということがあると思います。

画像を説明するテキストなくても可

 先ほども少し触れましたが、ブランドマネージャーは担当するブランドに対する強い思いがありますし、人間は自分のこれまでの経験を中心に物事を考えがちです。なので「中心にいるのはお客様」という理想を理解しつつも、必ずしもそうなっていなかったというのがこれまでの現実でした。

 現在アサヒビールは「お客様により商品を手に取ってもらう(=売れる)ためにはどうするか」という議論を開発段階から行うようになっています。

 そのために私たちがこだわっているのは、社員の家族や友達、知り合いの知り合いなど、目の前に実在する消費者をいわゆる「N=1」として見て、その人に直接様々な意見を聞くことです。どんなに身近な人でも構いません。「こういうタイプの人って今どき多いよね」という自分たちの曖昧な印象からスタートするのではなく、目の前の人に様々な角度で聞き、評価してもらうというのが最も重要視する手法です。

 それをベースにして、マーケターから出てきたコンセプトがどれだけビジネスとして大きくなるのか、さらに調査をかけて評価しています。よくある具体的なタイミングとしては「コンセプトを商品化するか」という段階、そして実際に商品開発した後に「商品を出すか、出さないか」という判断を下す段階です。

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リサーチが必要ないも答えの一つ。始める前に「徹底的な目的理解」

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この記事の著者

岩崎 史絵(イワサキ シエ)

リックテレコム、アットマーク・アイティ(現ITmedia)の編集記者を経てフリーに。最近はマーケティング分野の取材・執筆のほか、一般企業のオウンドメディア企画・編集やPR/広報支援なども行っている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2024/11/18 08:00 https://markezine.jp/article/detail/47314

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